2014/9/15 Mon. - 2
放課後。
自宅で少しゆっくりしてから、銀路は今日もゲームセンターへと赴く。
デフォルメキャラが表示されなくとも、居場所は解っている。
ならば、その場所を選択し続けるのが攻略の正道。
ギャルゲー的な解り易い行動選択だ。
もうすっかり配置を覚えた四階のビデオゲームコーナーで魔女の姿を探せば、丁度コインを投入するところだった。
少し離れたところで『レイディアントシルバーガン』の開始を見届ける。
昨日、最初のステージの最後のボスまでは到達した。
つまりは、そこまでなら見てもいいということ。
その間は、より近くであの素敵な笑顔の魔女のプレイを見ることができるのだ。
自然と胸が高鳴る。
銀路は、右手と右足を同時に出しながら歩み寄り、魔女の背中越しに画面を見る。
ぴくり、と魔女の肩が動いた気がした。銀路の気配を感じたのかもしれない。
だけど今日は何も言わず、プレイを進めていた。
銀路は視線を画面に向けると、ゲーム開始時のチュートリアルが終わったところ。
本編に入った途端、驚愕に目を見張る。
銀路が泥臭く産み出したパターンと、魔女のプレイは完全に別物だった。
圧倒的な自信に裏づけられた正確無比な自機の動き。
迷いなく放たれる攻撃は、吸い込まれるように狙った敵だけを落としていく。
「え? 黄色……」
銀路が試行錯誤の末に産み出したものとはまったく異なるパターン。
スコアも圧倒的に銀路より高い。
最初のボスを破壊するのを見届けたところで、銀路は静かに魔女の背後を去る。
自分が到達したところまでなら見てもいいだろう、そう思っていた。
だけど、ダメだ。戦略を間違えた。
彼女は上手すぎる。
こんなものを見てしまったらプレイを盗まずにはいられない。
それはズルだ。
攻略動画に頼るのと同じだ。
試行錯誤の楽しみがなくなってしまう唾棄すべき行為だ。
結局、銀路は『ゼビウス』の筐体まで離れて遠目に魔女の姿を見るだけに留める。
筐体へと笑みを向けたまま、今日もワンコインクリアして立ち上がる魔女。力の差を見せつけられた銀路は近づく気力もなく、そのまま彼女が立ち去るのを見送ってしまっていた。
二度目も爆死。
戦略のミスは戦術では取り返せない。戦略の立て直しが必要である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます