終末世界のモラトリアム
門松明弘
プロローグ「終末の夜明け」
西暦2000年。世紀末を人類は様々な思いで迎えていた。根拠もない予言を信じる者、それを見てくだらないと笑う者、何事もなく日々を過ごす者、それら全てを含めてただ騒ぎたいままに騒ぐ者。十人十色、当時の世界の人口の数だけ、リアクションはあった。
果たして世界は終わりを迎えるのか。しかし、世界が終わるなどと本気で信じている者などどこにもいなかった。
その証拠に、世界はいともあっさりと滅びに呑まれた。
12月24日。多くの文化圏で聖夜となるその日、滅びは始まった。
『ルイン』。世界のあらゆる場所にそれは現れ、文字通り世界を「消して」いった。その姿も形も、人や他の生物と似たものもあれば、全く異なるものもいた。ただ共通していたのは、世界に存在するものを消していく、それだけだった。
混乱した世界が自滅の道を選ぶのには、さして時間はかからなかった。列強は抑止力と謳っていたそれを容赦なく撃ち合い、焦土を広げ、毒をまき散らした。そうして、世界は終わりへと向かって行った。たった一年で、世界は残った人類の数を数える者もいなくなるほどに荒廃した。だが、逆に言えばまだ人類は残っていた。それを幸と見るか、地獄の延長と見るかは別として。
これは、21世紀というモラトリアムを生きた者たちの物語である。
終末世界のモラトリアム 門松明弘 @kadoma2
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