1-7
「父様さん!母さん!」
っち、またあの夢か。
俺は悪夢を振り払うかのように被りを振るとベッドから抜け出した。
日の出を迎えて辺りは白染み始めていた。
朝の肌寒い空気が肌を刺激する。
ここの所ずっとだ。もう暫く見なくなっていたのにな。
そう思いながら冷たい水で顔を洗う。
「ーーふぅ。さっぱりした。」
水と共に嫌な感情を洗い落とし服を着替える。
そして何時ものようにランニングに出かける。
朝日を浴びながら走っていると今朝の夢を思い出した。
もう少しだ。
今日までかなりの時間を待たされた気がする。
あと少しーーーー。
もう少しの辛抱だーーーー。
この日はトレーニングに全く気持ちが切り替わらず、はやる気持ちばかりが俺を叱咤する。
落ち着け。
この
それにーーーーーー。
ランニングから戻り、朝食を食べていると誰かが訪ねてきたのか戸を叩く音がする。
---ドンドンドン!---
「おいエル!起きてるか?今日は
どうやら
俺は扉を開けるとカイトを中へ迎え入れた。
「まずは挨拶じゃないのか?それにそんなこと言われんでもちゃんと覚えているさ」
「そういうなよ、つれねぇなぁ。エルは楽しみじゃねぇのか?」
有り体な言葉で迎え入れると、カイトがブスッとしたようにそう答えた。
「あぁ、勿論楽しみさ。」
ーーーこの日をどれだけ待ち望んだかーーーー
暗い笑みが込み上げてくるのが自分でも理解できる。
しかしカイトはそんな事には気付かずに再び俺に学園へ行こうと声を掛けてくる。
丁度朝飯も食べ終わったところだ。今日くらいは筋トレをサボっても罰はあたるまい。
俺は了承の意を唱えるとカイトに準備をするから待っているように告げ、寝室へと向かっていった。
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「それでは今から降魔の儀式をはじめます。講義では何回か説明したと思いますが、もう一度おさらいしておきましょう。」
ここは学園から3km程離れたところにある降魔の塔という場所らしい。
この場所は降魔の儀式を迎える学園生達がその身に魔石を宿すに相応しい実力が備わっているか試す、試練の場所だと伝えられている。
降魔の場は都市によって変化するらしい。ある場所では洞窟。ある場所では遺跡。ある場所では塔。
そのように場所によって形態を変える。
ロイド先生によると、塔に入るにあたり、
塔は全部で5階あり、最上階にたどり着いて初めて降魔の儀式を受けられる資格を得るそうだ。
無事儀式を受けることが出来たら、一人前の冒険者と認められFランクのギルドカードを授かる事が出来るというシステムになっている。
つまり降魔の儀式自体が冒険者ギルドへの登録、ということだ。
ギルドに登録したくない場合はどうするか?
その場合は申請すればいい。
しかし、殆どの人が冒険者ギルドに登録する。
魔力を使う職業は殆どがギルドを経由して依頼が成されるからだ。
例えば
その場合はギルドに登録していることで、患者の斡旋を受けることが出来る。
例えば
その商品の売買や、原料である魔石を始めとした魔力的素材の斡旋もギルドに登録することで受けることが出来る。
また、ギルドを経由しない場合は依頼者と受領者との個人での契約になるが、金銭のやり取りで揉める事が多いので普通はギルドを経由する。
その方が安心だからな。
それはさて置き塔にはモンスターは出現しない。
そもそも人族によって管理されているからな。
だか、塔にはあらゆる罠が仕掛けられている。
その罠をくぐり抜け、最上階を目指す必要がある。ということらしい。
そして塔にはどういう原理になっているかは分からないが(十中八九魔法によるものだろうが)、この塔をクリアした際の身体・精神・技術の各能力によって、身体に宿すことのできる魔力の大きさーーーつまり契約することの出来る眷属の強さに関係するそうだ。
それを聞いたみんなの気合が入る。
彼方此方でーーいくぞっ。ーーという声や、ーーー俺が一番だ!ーーーという声が聞こえてくる。
まぁ、何回も聞いている話だが気持ちの問題だろう。
突っ込むだけ野暮というものだ。
パーティーは予め決めて置くようにと指示があった。
それぞれが個々の能力を見極めて、自分に必要な人材を集めることも各人の能力たるものだと考えられているからだ。
なにより、このパーティーはそのまま冒険者のパーティーとして登録される事が少なくない。
むしろ余程の問題がない限りそのまま登録するパーティーが圧倒的に多い。
そのため、この時期から各人はこれから共にする事を前提に真剣に仲間を探す。
俺も自分で言ってはなんだが、それなりのパーティーメンバーと組めたと言ってもいいだろう。
一人目は《カイト・ホークショー》
なにより幼い頃から勝って知る気の知れたヤツである。
【カイト・ホークショー/人族】
【LEVEL】1
【HP】10/10
【MP】0/0
【攻撃】5(+10)〔鉄のナイフ〕
【防御】3(+15) 〔皮の鎧、皮の兜、木の盾〕
【俊敏】15
【運】 3
【特技】
(---)
二人目は《アシュリー・フォーサイス》
醒めた水の様な蒼い長髪を持つ少女。
カイトよりも更に能力は落ちるが、治療師の母親を持ち、治療については幼い頃から側で学んできた。鋭い観察眼による応急手当ては迅速に行われ、同い年で右に出るものはいない。
また、毒物の扱いにも長けて、得意の弓と組み合わせた遠距離攻撃は目を見るものがある。
アシュリーもカイルと同様に幼い頃からの付き合いがある。
【アシュリー・フォーサイス/人族】
【LEVEL】1
【HP】8/8
【MP】0/0
【攻撃】3(+5)〔ショートボウ〕
【防御】2(+10) 〔皮の鎧、皮の兜〕
【俊敏】10
【運】 3
【特技】
(----)
因みにこのステータスは各都市の冒険者ギルドにある特別な水晶によって証明される。
この水晶は貴重なもので、各都市に居る主から賜れた物だと伝えられている。
俺たちはまだ冒険者にはなっていないが、毎年、降魔の儀式を迎える学園生は特別に
因みに、冒険者に登録した後は有料だそうだ。
「準備は出来たか?」
俺は持ち物をチェックしていた二人に声をかける。
塔はチームメンバーの総評かの平均が高いチームから順番に入っていくルールになっている。
その後、30分毎に次のチームが入る手はずになっている。
上位の者ほど先に攻略する可能性が高いが、下位の者ほど塔に仕掛けられているトラップに掛かる可能性が低くなる為、一概にどちらが良いとは言い難い。
俺は断然早い方がいいが。
俺たちは下位を引き離してダントツのトップだ。
道具の点検を終えた二人が問いかけに答える。
「ええ。油断せずに行きましょう」
「バッチリだ。ワクワクするぜ!」
「カイト、私は貴方に言ってるのですからね」
「ははっ、アシュリーは手厳しいな」
塔を見上げ、軽口を叩き会う。
「二人とも頼りにして居る。いくぞっ!」
ーーーーこうして俺たちは降魔の塔に乗り込んだーーーーー。
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