原初の罪

@evejannn_

第1話序章ープロローグ

白い世界。



しかしここに一筋の光明さえも届かない。



氷で覆われた青白い世界。



どことなく朧げで今にも消えてしまいそうな、しかし、圧倒的な存在感も同時に持ち合わせたこの矛盾した世界に〝それ〟はいた。




この青白い世界の中で、たったひとつだけの存在として。



〝それ〟は人の形をしていた。そして〝彼〟はとても美しかった。


整った顔立ちに、透き通るような白い肌。それと対を成すような漆黒の髪は〝彼〟を覆うように腰よりも長く、風もないこの世界で緩やかに靡いている。




その美しいであろう瞳は閉じられていて拝むことは出来ない。



この氷で覆われた世界でみるその一糸纏わぬ姿はまるで氷で出来た脆く儚い氷の彫刻のような、そんな幻想的なイメージを見るものに与えるであろうことは想像に難くない。




しかし、それ以上に異様な光景がその儚げな幻想を砕いた。





鎖。



無数の鎖。



鈍色に煌めく無数の鎖が、上下左右、あらゆる方向から無限に伸び、〝彼〟の手足や首輪、身体に幾重にも絡まり、まるで鎖の牢獄の様にその存在を縛り付けている。



『ーーーーー。』



どれだけの時が流れただろうか。


悠久とも思える時の中で、誰かが呟いた。


『ーーーーーーーー。』


その声とも感じえぬ美しい旋律を思わせるその音で。

『ーーーーーーー。』


最後に〝彼〟は呟いた。




『見つけた。私の光よ。』



ーーーーーーーー。






後には無数の鎖と氷に覆われた世界だけが残された。


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