魔導狩人 =ドロップゾーン=
arm1475
その1
その亡骸は、実に奇妙であった。
死者の姿が奇妙と言う訳ではない。
魔導界〈ラヴィーン〉に於いて屈指の識者である、ミヴロウ国の宮廷賢者コウメイによる検視の結果、その遺体の損傷具合から、死因は地上千メートル以上からの墜落死と判断した。
問題は、その遺体が見つかった場所だった。
死体の在った場所は、ミヴロウ国の南にあるビスコ平原のほぼ中心。平原は直径四キロの円形を成しており、一軒も民家が無い、未開拓な野原であった。
一体何者が、何処から被害者を突き落としたのであろうか?
可能性として挙げられるであろう、僅かだが人を空へ持ち上げられる妖魔や鳥獣は〈ラヴィーン〉には存在するが、平原に隣接するミヴロウ国や近隣諸国には、その存在は確認されていない。
それら飛行生物が生息していなくとも、何者かがこの地に持ち込んだ可能性もある。
それもまた、この平原を横断していた商人のキャラバンの一人が、他の仲間の目の前で突如姿を消し、まもなく空から降ってきたという複数の証言によって否定される事となる。
平原に隣接する道に盗賊被害が増えた事で、人々が平原を迂回路にするようになってから奇怪な墜落死が始まり、死者の数は、謎が解明出来ぬまま増え続けて行くばかりであった。
その数が三桁を目前としたある日、ミヴロウ国王シフォウは、事件解決に、自身の友人であり、過去この様な奇怪な事件を数多く解明している、〈魔導狩人〉を招聘する事に決めた。
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