2.会合
月に一度だけ、門を開く館。その一室に集まるのは五人の人物。
「いい加減に決めろ、って?」
嘆息と共に言葉を紡いだのは、黒髪黒目の青年だった。応えるように頷いたのは幼さの残る面立ちの少年。首筋にかかる程度の銀髪が風でふわりと揺れた。
「ああ。なんか結構ヤバそうだぜ? 満面の笑顔で言われた」
そのときのことを思い出し、心底気色悪そうに少年は体を震わす。
「笑顔? あの外面は最高にいいが身内には金払われたって愛想なんか振り撒かない男が?」
驚愕する青年。いささか大げさすぎるように思えるが、部屋に集まった面々からすれば当然の反応だった。
「……それは随分とヤバそうね。確かにそろそろ決めてもいい頃だし」
この場唯一の女性が口を開く。意志の強そうな瞳、硬い印象を与えるまっすぐな金色の髪が、光を反射して煌めいた。
「言っておくが、俺は死んでもごめんだ。今だってうんざりしてるのに、あんなのになったらそれこそ生き地獄だからな」
「ああ、あんたはそうよね……。あたしも、今の生活以上に自分に合った良い生活なんて無いと思ってるから、ごめん被るわ。好き好んであんなものになりたがる人の気が知れない。そんなに良いものかしら?」
辟易したような青年の言葉に続けて、女が首を傾げる。
「……上辺だけ、良いところだけしか見ていないからだろうね。悪いところは無意識に目をそらすから」
ぽつりと、まるで独白のように言った、少年とも青年ともつかない風貌の、青い瞳の人物は小さく笑う。
「権利だけを振りかざすような、義務を怠る奴らからすれば、すばらしい地位に見えるんだよ。……くだらない」
「………………………………」
沈黙が、落ちた。それは居心地の悪いものではなく、ただそれぞれが思うべきことを思っている故に生じたものではあったが。
その状態で、一分とも一時間とも思える時間が経過し――……。
「……っと、もうこんな時間か。そろそろ終わろうぜ」
銀髪の少年が沈黙を破る。他の面々も同意を示して椅子から立ち上がった。
先陣を切った少年は、終始無言だった、全く同じ顔と言っても差し支えない――恐らく双子だろう人物を促して、真っ先に部屋を出る。
「今日はこれでお開き、だね。……じゃ、僕も用事あるから」
「………ああ」
「それじゃあね」
―――……パタン。
扉の閉まる音が響いて、そして室内は無人になった。
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