さよなら、愛しき私の異形

小高まあな

第1話




 畢竟、悪いのは私なのだろう。

 他の誰でもなく、私の責任なのであろう。彼に惚れてしまった、私の責任。

 異形のものに惚れてしまった、私の。

 然しながら、私には他に術が無かったのだ。

 あのような、置いていかれた子供のような、地上に降りてしまった神様のような、それでいて狡猾な悪魔のような、彼を放っておける訳が無いのだ。

 だから、私の責任なのだろう。

 今、こんなにも苦しいのも、悲しいのも、彼が隣に居ないのも、全て。  

 嗚呼、憾みます、神様。貴方がいらっしゃるのならば。

 何故、彼にあのような酷い仕打ちをなさったのですか?

 嗚呼、でも、私はほんの少しだけ感謝してもいるのです。

 そうでもなければ、私は彼には巡り会えなかったのですから。

 嗚呼、なんて愚かで醜いのだろう、私は。彼を憐れに思い、そしてそれに感謝するなんて。酷いひと。

 もしも、何方か、神様にお会いすることがありましたら、私の代わりに謝っておいてください。

 彼に惚れてしまったことを。

 神様を憾んでいることを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る