ロボット工学三原則―短編、中編のまとめ(ここだけ読めば良い)

第一条

 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。


○一条に潜む問題

【人間について】

 ・ロボットの母性は第一条に優越する?(「第一条」)(これはセルフ・ジョークかなという感じもある)

 ・「人間」が複数存在し、複数の同時多発的危害が生じたとき、ロボットはどう判断するべきで、どう行動するべきか(「心にかけられたる者」;明白な回答はない)

 →とりあえず数量を最優先する→【危害について】の同項を参照せよ

   →そも「人間」とは何か(「バイセンテニアル・マン」)

   →「従うべき」「人間」とは何か(どのような性質を持つ者か)


【危害について】

 ・ロボットは人間に直接的危害を加えることはできないが、危害を予測できないとき、結果として危害となることはありえる(「レニイ」)

 ・ロボットは危害を加えるような依頼をすることは(ギリギリ)できる(「バイセンテニアル・マン」)


 ・危害を看過するとはどういうことか(「迷子のロボット」)

  →危害を看過しないよう行動した結果、確実に危害から人間を救うことができず、ロボット自身も破壊されるような状況(第三条違反)では、危害を看過することも可能である。

  →弱い一条下では「未必の故意」は場合により成立する。

  

 ・危害を看過しないとはどういうことか(「迷子のロボット」)

  →人間がいかなる危害をも受けないで生活することは困難であり、ましてロボットを必要とする宇宙空間や特殊環境では、「ちょっと危険」という場面は存在しうる。そのような場面において、ロボットは人間を危険から遠ざけようとするが、そのことが作業効率を低下させてしまう(こともある)


 ・精神における「危害」とは何か(「うそつき」「お気に召すことうけあい」「校正」)

  →精神における短期的危害を看過できないと、長期的な破綻が生じうる

   →「お前の小説はクソだな」と伝えることは俺の精神を蝕む(危害が発生するのでロボットはこの真実を俺に伝えられない)が、では(事実クソである)俺の小説を「エクセレント」「ビューティフル」と評価した場合、どこかでその事実に気づいた俺はより深く傷つく(より大きな危害の看過では?)。

    →本質的矛盾が含まれ、面白いところ


 ・「人間」が複数存在し、複数の同時多発的危害が生じたとき、ロボットはどう判断するべきで、どう行動するべきか(再掲;「マルチバックの生涯とその時代」「災厄の時」など)

  →第零条の発生:数でみる(最大多数の最大幸福の実現を目指す)

   →人類の危害を看過しないために、個々の(愚かな?)人間に最小限の危害を与えることは許容される

    →マシンによる人類支配はこれによって各条を違反せず達成可能である


・危害を避けるために「人間」側が気を使う、人間の行動が制限されるということもあり得ないことではない


第二条

 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。


○二条に潜む問題

・命令が拮抗したときどうするのか(「心にかけられたる者」)

 →アシモフは基本的に、「賢い者」がロボットを扱う話を扱っているので、あまりこの事態はない。ねらい目かもしれない


・長期的に一条違反を引き起こす可能性がある命令は引き受けられる(「迷子のロボット」)


・命令には何がなんでも従い、二条に従わないことで一条違反が想定される事態では、ロボットは自発的な嘘も辞さない(「校正」)


・あいまいな命令はあいまいな結果を生む(「堂々めぐり」「危険」「迷子のロボット」)


・人間に危害を加えない命令には従わなければいけない。それがどんな愚かな人間から発せられたものであれ(「バイセンテニアル・マン」)


・人間に(とりあえず、短期的に)危害を加える命令にはいかなる場合にも従うことができない。となれば、「煙草を持って来い」は「従うことができない」かもしれない。(原典には同種の主張は(おそらく)ない)


第三条

 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


○三条に潜む問題

・あいまいな二条と拮抗するとかわいそうになる(「堂々めぐり」)


・ロボットには自殺は許されていない(オリジナル)


(思いついたら追記します)

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