第5話
拠点リフテンで敵の攻撃に備える聖戦士マリオン。拠点に備えられた神敵探知装置には確かに敵接近中の反応がある。
「愚かなり山の民。よもや本当にリフテンを攻略できると思い込んでるのではあるまいな。我らが神王軍の精鋭にかなうはずもあるまい。」
「その通りです、聖戦士殿。マリオン様のお手を煩わせることはありませぬ。山の国の部隊など我らだけで撃ち滅ぼしてご覧に入れましょう。」
神王国と山の国との国境に位置する拠点リフテンは地の利が活きる天然の要塞である。すなわちそれは神がこの地にお与えになった祝福に他ならない。神の祝福を受けたリフテンを攻略しようなどという無知蒙昧な異教徒どもは、神王軍精鋭部隊の力を以て啓蒙せねばならぬ。
「神敵襲来!総員敵の攻撃に備えよ!神の地リフテンを守り、邪教の者どもを一人残らず打ち滅ぼすのだ!」
さすがは神王軍が誇るリフテン防衛部隊である。その聖戦兵器の操作には一切の淀みがない。山の国のゴーレム部隊は精鋭達が操る聖石射出砲の天誅により、次々と撃ち滅ぼされていく。
「退いてはならぬ!我らが神より授かりし新たな力を以て、古代神王国に奪われた我らの地を取り戻すのだ!」
山の国部隊からそう高らかに叫ぶ声が聞こえた。美しき声を持つその者は、その容姿や立ち振る舞いも神々しいまでに美しかった。
「我が名は正義執行者クレオ!我らが山の神に代わり、偽神を信ずる愚か者どもを成敗してくれる!出でよウリエル!」
クレオと名乗る者がそう叫ぶと、どこからともなく巨大な兵器が現れた。
山の国の切り札、神命実行兵器ウリエル。その姿はマリオンが操縦する天使と瓜二つであった。
邪神の尖兵ウリエルの魔性が膨れ上がり、神王軍の前線部隊は邪法に侵食されていく。
「おのれ邪神の手先め、あのような物を用意していたとは。我らが神の使い天使ユリエルの姿を騙るおぞましきガラクタよ。神を冒涜するその存在、決して許してはおけぬ!」
マリオンの激情が天使ユリエルを呼び寄せる。
二体の天使が対峙し、リフテンの地で聖性と魔性が激しくぶつかり渦を巻く。
「あれは偽天使ユリエル!ちょうどいい、神をも畏れぬ貴様らの横暴も今日までだ!神に代わって真天使が偽神の使いに裁きを下してくれようぞ!」
「愚かなり山の民!天使の姿を騙る悪魔など、聖戦士の名に懸けて成敗してくれる!」
ユリエルの聖性、ウリエルの魔性。両者の力はまさしく拮抗していた。
神王軍と山の国の軍、双方の兵は天上で繰り広げられる戦いをただ遠巻きに眺め、己の神の勝利を信じることしか出来なかった。
天使の出力は上昇し続け、機体が撓み始める。両者限界が近い。
「おのれ偽天使め!今ここでウリエルを喪うわけには行かぬ!来たるべき神命遂行のその日のため、ここは一旦退かせて貰うぞ!」
クレオと山の国の民が退却を始める。
「逃げるか悪魔!しかし神王教の繁栄に天使は不可欠、不本意だがここは見逃してやろう!」
これ以上戦えば天使ユリエルも無事で済む保証はない。マリオンとリフテン防衛隊は未来に訪れるであろう神の国実現のため、天使の名を騙る悪魔を見逃すより他なかった。
あの悪魔は将来必ず我ら神王国の障害となりうる。天使を操る聖戦士として、悪魔の浄化を以て我らが神の正統性を世に示さねばならない。
マリオンは悪魔討伐を胸に誓い、その心はより一層の信仰で燃え上がるのだった。
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