読書家の彼女

 もうすぐ電車が、待合せの駅に着く。

 すごく緊張してきた。



 昨日彼女に告白した。

 教室の隅で本を読んでいる彼女に心を奪われたのは、実はもう1年近く前だった。


 告白してだめだったらと臆病な僕はずっと告白できなかった。

 次の日からどう顔を合わせていいか分からないから。


 だから3学期の終わりと決めていた。


 それならクラス替えで、もう顔を合わせなくてもいい。


 彼女は教室で本を読んで帰るから、放課後いつも一人になる。

 終業式もそうするか分からないので、終業式前のテスト最終日に告白した。

 終業式がきまずいけど、告白できなくて後悔したくなかった。


「え、映画、すっごく面白いから行こう」


彼女は無表情に頷いた。


 え?オッケー!?オッケーなの?とすごく興奮した。

 でも、なんで無表情なの!?と聞きたかったけど、心臓がバクバク言ってて、連絡先を交換するのが精一杯でその場を立ち去った。



 駅に着いて、僕は待合せの改札に向かった。

 改札を出た壁際で彼女は無表情に本を読んでいた。いつもの彼女だった。



 僕に気づいた瞬間、少し笑顔になった。

 黒髪をつやつやさせながら、僕に向かって胸元に小さく手を上げた。


 1日遅れで僕は確信した。僕達これから付き合うんだ。

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