狐のユッコの大冒険

第23話 ３つの試練《しれん》 ３

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　それからしばらくして、ヒロユキが立ち上がり、

　「よし！　わかった！」

　コハルも疲（つか）れた様子（ようす）を隠（かく）さずに立ち上がって、

　「そうね」

　どうやら答（こた）えが出たみたいね。

　ヒロユキがドアノッカーのところに行き、コハルを振（ふ）り返（かえ）る。

　「いいな？」

と問（と）い返（かえ）すと、コハルがうなづいた。

　ヒロユキがゆっくりとノッカーでドアを叩（たた）く。

　１、２、３……。

　「６と。これでよし！」

　ちょっと待（ま）ったぁ！　よしじゃなーい！

　私（わたし）はすぐに飛（と）びかかって、最後（さいご）の一回（いっかい）のドアノックを尻尾（しっぽ）で無理（むり）矢理（やり）に叩（たた）いた。

　それを見たヒロユキとコハルが青（あお）ざめる。

　「おい！」「ちょ、ちょっと！　ユッコ、ダメ！」

　それはこっちのセリフ！　なに数（かぞ）え間違（まちが）いしてるのよ！

　部屋（へや）全体（ぜんたい）が震動（しんどう）を始（はじ）め、二人が抱（だ）き合（あ）っておびえている。

　扉（とびら）が強（つよ）い光を放（はな）ち、どこからともなく女性（じょせい）の声（こえ）が聞（き）こえてくる。

　「せ、正解（せいかい）よ」

　女神（めがみ）の声（こえ）だ。気のせいか笑（わら）いをこらえているように聞（き）こえる。……見ていたわね。きっと。

　それを聞（き）いたヒロユキとコハルはほっと胸（むね）をなで下（お）ろし、慌（あわ）てて互（たが）いから離（はな）れた。

　そして、微妙（びみょう）な表情（ひょうじょう）で顔（かお）を見合（みあ）わせ、

　「もしかして俺（おれ）たちの方がまちがってた？」

　「……みたいね。ユッコの方が頭（あたま）がいいってことよね……」

　はあ。もっと勉強（べんきょう）をしっかりしてよね。あやうく死（し）ぬところだったじゃないの！

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　二人は気持（きも）ちを切（き）り替（か）えるために、少し休憩（きゅうけい）するようだ。

　さっきの問題（もんだい）は間違（まちが）えたけど、判断（はんだん）は間違（まちが）っていないと思う。だって次は……、多分（たぶん）、力（ちから）の試練（しれん）、ボスルーム。ヒュドラが相手（あいて）。

　私（わたし）は前足（まえあし）でそっと扉（とびら）をさわる。

　むこうの部屋（へや）には、確（たし）かに体長（たいちょう）１５メートルもの巨大（きょだい）なヒュドラが中央（ちゅうおう）で待（ま）ち構（かま）えている。

　っていうか、二人じゃ無理（むり）ね。ちょっとズルをするようで悪（わる）いけど、女神（めがみ）様（さま）、期待（きたい）するなら将来（しょうらい）の二人にお願（ねが）い。

　私（わたし）は心の中でそう念（ねん）じて、扉（とびら）越（ご）しに石化（せきか）の魔法（まほう）でヒュドラの心臓（しんぞう）を石（いし）にした。

　ヒュドラは巨体（きょたい）だけに、すぐには気がつかなかったようだけど、血流（けつりゅう）が減（へ）って眠（ねむ）るように目を閉（と）じて地面（じめん）に寝（ね）そべっていく。

　……はい。退治終了（たいじしゅうりょう）。耳元（みみもと）で女神（めがみ）が、「もう。しょうがないな」っていう声（こえ）が聞（き）こえた気がするけど。多分（たぶん）、気のせい。

　二人が気合（きあ）いを入れて、そばにやってきた。

　「コハル。行くぞ！」

　「うん」

　そして、ゆっくりと扉（とびら）を開（ひら）いて中（なか）を見（み）た瞬間（しゅんかん）、

　「「ヒッ」」

と息（いき）をのんでかたまった。その足（あし）が恐怖（きょうふ）で震（ふる）えている。

　あれ？　もう退治（たいじ）しちゃったけど。もしかして寝（ね）てるって思っている？

　ヒロユキが小さな声（こえ）でコハルにささやく、

　「どうやら寝（ね）てるみたいだ。絶対（ぜったい）に起（お）こすなよ」

　「うん。……ねぇ。ヒロユキ。あっちの出口（でぐち）の扉（とびら）。開（あ）いてない？」

　「え？　本当（ほんとう）だ。開いてる」

　「だからさ。そっと静（しず）かに通（とお）り抜（ぬ）けて、行っちゃおうよ」

　……あのう。もう死（し）んでるんだけど。

　そう二人に言いたいけど、言えない。

　二人はヒュドラが寝（ね）ているうちにと、そろりそろりと部屋（へや）の壁伝（かべづた）いに反対側（はんたいがわ）にある出口（でぐち）に向（む）かっていく。

　しょうがないから、私（わたし）もそれについて歩（ある）いて行く。なんだか釈然（しゃくぜん）としないけどね。

　幸（さいわ）いにというより、当（あ）たり前だけど。無事（ぶじ）に出口（でぐち）にたどり着（つ）いた二人は、そっと最後（さいご）の部屋（へや）に入っていく。

　私（わたし）は後（うし）ろを振（ふ）り向（む）いて、ヒュドラを見て、もったいないから魔法倉庫（マジック・ガレージ）にヒュドラの死体（したい）を収納（しゅうのう）した。

　一瞬（いっしゅん）でヒュドラの巨体（きょたい）がかき消（き）える。……これでよし。ヒュドラの肉（にく）って炙（あぶ）るとおいしいのよね。二人はいらないみたいだし、私（わたし）の食料庫（しょくりょうこ）のストックに入れておこう。