X10 入部!
「おはよー、北星さん」
「おっはよーっ」
今日は丁度同じタイミングで改札を通った。
なんとなくだけど、一緒に登校するときは待ってるほうが気楽だと思う。今日は待たせなくてよかった。
「それで瀬奈ちゃん、エクストリーム部はどうするの?」
「うーん……」
正直なところ、入りたくはない。
理由はもちろん、あのおかしな部長のせいだ。
良く言えば真面目なんだろうけど、実際にはただのエクストリーム馬鹿だ。そういう人は大抵自分の都合中心で物事を運ばせようとするから、付き合うと確実に疲れる。
実際に私はもう既に振り回されつつあるし。
だけど潜らせてもらえるのならば、それは嬉しい。それに日進先輩や智恵文先輩とお近付きになれることもメリットだ。後は部長がどれだけ無理難題を押し付けてくるかなんだけど……。
「悩むなら入っちゃえばいいと思うよ! 昨日も言ったけど、みんな入りたくても入れないんだから! 絶対にもったいないって!」
北星さんもずっとこう言ってるし、ここまで聞かされて入らないなんて言ったら嫌味っぽいかもしれない。
だけど私、別に何かの才能があるってわけでもないから、呆れられて早々に切られちゃう可能性もある。
まあ実際にやってみないとわからないけど。
「じゃあ、入ってみようかな」
「うんうん! 私も親友がエクストリーム部員だったら鼻が高いよ! がんばってね!」
北星さんは私の手を取り、ぶんぶんと振り回す。
いつの間にか親友にクラスアップしてしまった。こんな簡単でいいのかなと思いつつも、いつか本当に親友と呼べる間柄になれればいいなと願ってる。
「おっ、北峰。決心はついたのか?」
放課後、私は部長に入部する旨を伝えに行こうとした。するとまるで待ち構えていたかのように階段の踊り場で会ってしまった。
腕を組み、つまらなさそうないつもの表情で。
「ひとつ聞きたいんですが」
「なんだ?」
「私を必要とするってことは、どこかで潜る必要があるってことですよね?」
「……ああそうだ」
なんか少し間があったけど、やっぱり潜らせてもらえるんだ。北星さんも強く推しているし、体験入部的な感じで入ってみてもいいかな。
「じゃあ少し入ってみても──」
「よし決まりだな! じゃあ早速来てくれ!」
私の言葉を最後まで聞くことなく、部長は私の腕を掴んで引っ張ろうとした。
「だから腕掴まないでください!」
「離してお前がついてくる気がしないのだが」
「行きます! 行きますから!」
全く、今までそうだからって今回もそうとは限らないんだから。
一応入部するって伝えたんだから、そういうところに気が付いて欲しい。
「ここが部室ですか……」
「そうだ」
部室棟のある建物の、最上階を全て使っている。壁も取っ払ってなんとなく空間がもったいない。
「部員は何人いるんですか?」
「そうだな、4……いや、6人か」
なんで2人増えた?
それよりもたった6人でこのスペースは本当に無駄だと思う。それだけ優遇しているってことかな。
「たった6人なんですか? 4人は知ってますが、あとの2人は?」
「1人は怪我で長期離脱だ。もう1人はお前だろ」
えっ、もう既に私が勘定に入ってる!? なんて気の早い。こんな海のものとも山のものとも知れぬ……ああいや、海のものだとは思っているんじゃないかな。
とりあえず試用してみてくださいよ。多分がっかりするから。
「それで私は何をすればいいんですか?」
「そうだな、お前にはこれをやってもらおう」
「こ、これは……っ」
アイロンとアイロン台!?
「えっ、ひょっとして新人の雑用的なことですか」
「うちは即戦力にそんなことをさせたりしない」
部員数実質5人じゃあ下働きなんてさせている余裕はないかな。
だとしたらなんでアイロン掛け? 潜れるんじゃないの? てか即戦力って何?
「じゃ、じゃあ何を……」
「1ヶ月後、エクストリーム・アイロニングの大会がある。お前にはそれに出てもらう」
ええええええーっ! なんだそりゃあああー!
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