X6 部活!
「ごめんー、待った?」
「私もさっき着いたとこだよ! さあ早く行こうよ!」
北星さんとは逆の電車だから一緒には来れなく、改札で待ち合わせていた。
もう既にいた風蓮さんはどれだけ早く来ていたのだろう。さっき着いたってのは社交辞令だよね?
待たせちゃったかなぁ。せめて学校までは早めに行こう。
うん?
角を曲がり、校舎が見えてきたとき、私はおかしなものを見た気がした。
「ねえ、今、人が飛んでた気がしたんだけど」
「飛んでたんじゃないの?」
え?
人って飛べたっけ?
いやいや、飛び跳ねていたとかだろう。
といっても学校の壁は3メートルくらいある。いくらなんでもそれを越えるほどの高さが出るとは思えない。
……ってやっぱり飛んでる!
「い、今の見た!?」
「うん! きっとトランポリン部だよ! 面白そうだよね!」
ああトランポリンか。それならばあの高さは納得。
「って、なんでトランポリン部があんなところで飛んでるの!?」
「そりゃあ見せるためだよ」
うーん?
見せるためだったら北星さんの言うとおり、外からでもわかるんだからいい場所だと思う。
部活紹介だっけ? こういったことするんだ。
ということは、あの壁の向こうでは色んな部活がやっているんだろう。
私はワクワクが止められず、足を早めた。
「うわぁ……」
門をくぐるとそこには所狭しと様々な部活がアピールをするかのように様々なことをやっている。
「い、今の人、壁を走ってたよ!」
「フリーランニング部だよ! 私が入りたい部なんだ!」
「ほぇー……」
北星さんはフリーランニングやりたいのかぁ。
それにしてもみんな派手なパフォーマンスをやってる。
確かにこれじゃあ文化系は地味で目立てないから入部希望者も少ないだろうなぁ。
そもそもこの学校を選ぶ人はきっとアクティブな人ばかりなんだろう。
「校庭のほうもきっと凄いよ!」
「うん、行こうっ」
北星さんが駆け出そうとしたとき、突然の大音量。
「うっわ、凄っ」
「ブラバンかな! うちの学校最大の文化部だよ!」
これだけの音、どこからでも聞こえる。これは他の派手なパフォーマンスをやっている運動部より有利かもしれない。楽器も自在に演奏できたら楽しそうだなぁ。
ふとそのとき、私は昨日のことを思い出した。
「ねえ、エクストリーム部っていうのは?」
「あー……。あそこは多分出てないよ」
「なんで?」
「なんでってそりゃあ……」
「こんにちは、藤岡さん」
北星さんの話の途中、声をかけられたからそちらへ顔を向ける。するとそこにいたのは確か2年生の智恵文先輩。
うわさをすれば影とはよくいったもので、私は無意識に体を引いてしまった。
「お、おはようございます先輩」
私のそんな態度に一瞬寂しそうな顔を見せた智恵文先輩は、再び笑顔を向けた。
「部活紹介はこの学校の名物なの。楽しんでいってね」
そういって智恵文先輩は軽く会釈をし、去っていった。
ううぅ、とても申し訳ない気分になった。昨日のアレのせいで悪印象だったけど、智恵文先輩はとても素敵な人で個人的には仲良くして欲しい。
そうだ! 全てアレが悪いんだ! 滅べ!
「ねっ、ねっ! 今の素敵な人、誰!?」
おっと早速食いついてきたね北星さん。
「2年生の智恵文先輩だよ」
「瀬奈ちゃんこの学校に知り合いいないって言ってたよね! 昨日はずっと私と一緒だったし、いつ知り合ったの!?」
「早朝……、北星さんがまだ来る前だよ」
「ええーっ、聞いてないよ!」
言ってないからね。あれは私の中でもう消したい過去なんだ。
「ねえねえ! 何があったの!?」
「いやぁ、あはははは……」
がんばって誤魔化そう。何もなかったに決まっている。
「あれっ、えーっと、確か北峰さん。おはよう」
私の努力を空しく打ち破るのは、3年生の日進先輩。
綺麗だしやさしそうだし、本来なら出会えてラッキーくらいに思えるはずなのに……。アレのばかぁ。
「あの、私、藤岡ですけど……」
「えっ? ……ああ、そうだった。ごめんごめん。部活紹介、楽しんでる?」
「まあその、はい」
「それはよかった。あいつが変なこと言ってたけどさ、気に入った部活に入るといいよ。じゃあね」
日進先輩は爽やかな笑顔を残し、去っていった。
私は心の中でアレを呪った。アレさえいなければ私は日進先輩のことを素敵な先輩として惚れていたかもしれない。
「ちょっ、瀬奈ちゃん! 今の綺麗な……男の人? 誰!?」
こんな感じだったはずだ。くやしい!
「今のは3年生の日進先輩だよ」
「えええっ!? あの人が日進先輩なんだ!? 全然イメージが違う!」
あの人が? イメージ? まるで知識として知っているような言い方だ。
まああれだけ綺麗な人だし、うわさになっていてもおかしくないのかな。
「あの人とも昨日の朝会ったんだね!? 一体何があったの!?」
ううぅ、とても言いたくない。
だけどきっと言わずにいられないだろう。北星さんの目がとんでもないほど輝いている。逃がしてもらえそうにもない。
「……わかった、話すよ。だけどできれば人のいないところで……」
「じゃあ教室だね! この時間ならみんなまだあちこち見て回ってるはずだから誰もいないと思うよ!」
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