第11話

練習が終わって、萌は三人の友だちと一緒に部室を出る。



自転車置き場まで並んで歩きながら、他愛もない話をするのが、夏休み期間中の毎日の日課みたいになっていた。



「ああ、今日の練習はキツかったよね」



原亜希奈が手で顔を仰ぎながらダルそうに言う。



「うん。しんどかった。こんなに暑かったらさぁ、来週からの合宿は地獄だよ」



坂口かながため息を吐いた。



「合宿かぁ……」



未だに誰にも練習を休みたいことを伝えていない萌にとって、合宿も頭の痛い問題だった。



OGの先輩たちも参加して、二泊三日の行程で学校で行われる合宿にも、参加費が必要らしい。



たいした金額ではないが、やはり母親には言い出しにくいのだ。



「合宿といえば、怪談百物語だよね」



萌の心を知りもしない亜希奈が、呑気に切り出した。

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