菊とコスモスのあいだ
――キバナコスモスって菊とコスモスの中間みたいだよね。
公園のベンチで隣の彼女がふと呟く。
視線の先ではオレンジ色の花が九月の陽射しに花びらを透かしつつ揺れていた。
――もともとコスモス自体、キク科だからね。
一般的なコスモスは確か大春車菊(オオハルシャギク)とかいうはずだ。
――そうなんだ。
僕の答えに彼女は苦笑いして薄ピンクのマタニティ服のお腹を撫でる。
――秋桜(あきざくら)って漢字で書くし、ピンクや赤のイメージがあるから、あん
まり菊って感じがしなかった。
その意味では、確かにオレンジのキバナコスモスの方が本来所属するキク科に相応しいかもしれない。
――コスモスは独立してコスモスって感じがする。
そう語りつつ僕の緑のシャツの肩にいつの間にか落ちた小さな銀杏の葉を取る。
まだ縁(ふち)しか黄色くなっていない。
――僕もそんな気はするよ。
鮮やかなオレンジの花びらに秋の穏やかな陽を受け止めるキバナコスモスもまた、誇り高い花のサラブレッドじみて見える。
――そろそろ時間。
彼女が立ち上がる。すぐ向こうが病院だ。
今日の検診で僕らの子供の性別が分かるかもしれない。(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます