影から始まる嘘吐きライフル
お菓子なテディベア
第1話
「……あーもっ、腹立つ! ムカつく!」
カツカツと靴音を鳴らし夜道を歩く影があった。
忌々しげに言葉を漏らし、そんなに地面を踏みつける必要がどこにあるのかと言わんばかりに強く足を踏み出す少女。とにかく何処か落ち着く場所へ。
「別に私悪くないじゃないっ、……~~っ」
悪かったとしてもあんなに責めるものかと吐き出しきれない感情を吐き出して歩く。明かりも灯らなくなった街灯がジジジッと耳障りな音を垂れ流し、涙を流すかのように火花を散らす。
今日の昼のことだ。
いつものように休み時間を過ごしていたところ、何故だか知らないが女子からの人気が高い男子をだまくらかしたとして罪を着せられた上にあらゆる嫌がらせを受け、振り切ってやっと家に帰ったのだ。
ただ向こうが痛々しい勘違いをしていたものだからバッサリと本性を剥き出しにしてまで切り捨ててやったまでだ。
「……チッ……」
あまりにも感情の波が激しすぎて付けているはずの仮面がボロボロと壊れ崩れ果ててしまう。
時間は午後10時近く。すっかり人通りも少なく、彼女にとっては気楽で楽しく穏やかに過ごせる時間帯だ。
……穏やかに。そのはずではある。
そうこうしているうちに人のいない公園に着いた。子供はもちろん大人も野良猫もいない静かで空気もひんやりとしている閑散とした空間。
思わず笑みが浮かんで鼻歌なんかを歌ってみる。
「うーん、こんな時間が続いたらいいんだけどなあ」
ぼんやりと澱んだ空を眺め、キィキィと風に揺られるブランコへ飛び乗った。
「うわ、ととっ。危な」
がちゃがちゃと音を立ててブランコを揺らし独り言を呟いてみる。大きく息を吸い、深く息を吐く。それを数回繰り返しなんとか気分を落ち着かせたところでふとなんとなく周りに目が向いた。
「…………? なんの音?」
暗い壁の向こうからなにやらおかしな音がする。
なにかを引きずって歩くような鼓膜を震わせている。しかも気のせいでなければこちらに近づいている。
公園に一人立つ灯りが揺らめき出し、点滅を繰り返し始めてジリジリと先ほどの街灯よりも大きく叫び挙げ句の果てには破裂した。
「うわっ……?! な、なに」
強い風が吹き、髪と砂を巻き上げて去っていく。思わず振り向いたその先に、何かが確かに存在していた。
何かとは言えない。だが確かな何か。
ぞわりと怖気が駆け回り、公園を飛び出した。
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