みゆちゃんのクローバー

流民

第1話

 今日もゆみちゃんは、のはらで四葉のクローバを探していました。

「今日も見つからないな~」

 もう何日も何日も、みゆちゃんは四葉のクローバーを探しているのです。

 でも、四葉のクローバーを見つける事は出来ませんでした。

「いったいどこにあるんだろう?」

 みゆちゃんは、ともだちのさちこちゃんに、四葉のクローバーがあれば、ねがい事がかなうよ、と聞いて、みゆちゃんは、いっしょうけんめいよつばのクローバーを探しているのです。

「森の中に行けばクローバー見つかるかな?」

 のはらの近くには大きなくらい森がありました。でも、そこにはお父さんに行ってはいけません。と言われていたのです。

 でも、みゆちゃんはどうしても四葉のクローバーを見つけたくて、その森の方に向かって行きました。

 そして、みゆちゃんは森の入り口で四葉のクローバーをようやく見つける事ができました。

「よかった、これでねがい事がかなう」

 みゆちゃんはよろこんでそれをつみました。でも、その時です。急に強い風が吹きました。すると、みゆちゃんの持っていた四葉のクローバーの葉っぱは一枚ずつ風にとばされ、森の中にとんで行ってしまいました。

 それをみゆちゃんは、まって。と言って森の中においかけて行ってしまったのです。

 クローバーの葉っぱを追いかけて、みゆちゃんはくらい森の中を走って行きます。でも、くらい森の中、風にのってはこばれていく葉っぱを、みゆちゃんは探しますがどこに行ってしまったのかわからなくなってしまいます。

 そして気が付いた時。みゆちゃんは、くらい森の中で一人ぼっちになってしまっていました。

 みゆちゃんは、今まではいっしょうけんめい葉っぱをおいかけていたので気が付きませんでしたが、葉っぱがどこに行ったのかわからなくなって、森の中をみわたすと急にさみしくて泣き出したいきもちになってしまいました。

「おかあさん……」

 ひとつぶのなみだが、みゆちゃんの眼からこぼれおちました。

 すると大きな木の後ろから子犬がしっぽをふりながら、みゆちゃんのに近づいてきます。

「ねえ、何で泣いてるの?」

 子犬はみゆちゃんにそう話しかけます。

「おかあさんにあげる四葉のクローバーの葉っぱがとんで行っちゃったの」

 みゆちゃんはそう言って、葉っぱの飛んで行ってしまったクローバーを子犬に見せます。

 子犬は少し、首をかしげてそれを見ます。そして、子犬はみゆちゃんにこう言いました。

「もしかして、その葉っぱはこれ?」

 子犬はそう言って、しっぽにはり付いたクローバーの葉っぱを、みゆちゃんに見せます。

「ああ、それよ子犬さん。私に返してくれない?」

 子犬は喜んでみゆちゃんにクローバーの葉っぱをかえします。

「ありがとう子犬さん。でも、まだあと三枚葉っぱを見つけないと」

 またみゆちゃんは少し悲しそうな顔をします。すると、子犬はみゆちゃんにこう言いました。

「じゃあ、僕も一緒に探してあげるよ」

 みゆちゃんは子犬の言葉にうれしくなって、子犬にほほえみかけます。

「ありがとう子犬さん」

 子犬はみゆちゃんのえがおがうれしくて、みゆちゃんのまわりを、うれしそうにかけ回っています。

 そして、みゆちゃんと子犬は森のおくに歩いて行きます。すると、くさのおくの方でがさがさと何か音がきこえます。

 みゆちゃんはその音におどろいて、子犬のうしろにかくれ、子犬はみゆちゃんをまもるようにみゆちゃんの前にでました。

 そして、みゆちゃんと同じくらいのせの高さの草のすきまから、白いしっぽがひょろりと見えました。

 そのしっぽは、とてもきれいなまっしろいしっぽです。

「子犬さん、あのしっぽは何かしら?」

 みゆちゃんは子犬にそうたずねます。子犬は、みゆちゃんにほほえみかけてこたえました。

「みゆちゃん、あれはキツネだよ。この森にすむまっしろな毛のキツネだよ。だからだいじょうぶだよ」

 子犬がそうこたえると、そのまっしろなしっぽのキツネが草むらの中から、ぴょこんとかおを出します。

 かおを出したキツネのあたまには、クローバーの葉っぱがのっていました。それを見たみゆちゃんはキツネにはなしかけます。

「ねえ、キツネさん。そのあたまにのってる葉っぱはどうしたの?」

 少しくびをかしげ、ふしぎそうなかおをするキツネ。

「なにか、あたまにのってる?」

 キツネは前足であたまをさわると、そこにはクローバーの葉っぱがあります。

「あれ? 何だこれ? いつのまに付いたんだろう?」

 キツネはそういって、前足でもったその葉っぱを見ます。

「ねえキツネさん。その葉っぱ、たぶんわたしのだと思うの。かえしてくれない?」

 みゆちゃんはそういって、葉っぱのなくなったクローバーをキツネに見せます。

「ああ、ほんとだ。葉っぱがなくなってるね。じゃあこれはかえすね」

 キツネはそういうとクローバーの葉っぱをみゆちゃんにわたしました。

「ありがとう、キツネさん。これで二枚そろったわ、子犬さん」

「よかったねみゆちゃん」

 子犬とみゆちゃんは、えがおでかおを見合わせます。

「そういえば、さっきここであそんでる時に、なんだかみどりいろの葉っぱがスミレがいっぱいさいてるほうに、とんで行ったような気がするよ」

 みゆちゃんはキツネに聞きました。

「そのスミレがいっぱいさいてる所ってどこなの、キツネさん」

「あっちの方だよ」

 そう言ってキツネはそのばしょにむかって走って行きます。

 そのうしろに、みゆちゃんと子犬はついて行きます。すると少しあるいたところで、キツネはみゆちゃんたちが来るのをまっていました。

「ほら、ここにいっぱいさいてるでしょ?」

 キツネはスミレの花畑のほうを前足さしました。そして、そのキツネの足のさした方には、森の木のあいだからお日さまのひかりがこぼれていて、スミレの花がそのばしょにいっぱいさいていました。

みゆちゃんと子犬、キツネはそのあかるいばしょに歩いて行きます。

 そのあかるいばしょはまるで、おかあさんのようにあたたかく、みゆちゃんを包み込んでくれるようでした。

 そして、そこにはピンク色のスミレがたくさんさいていて、そのやさしいかおりに、みゆちゃんは、うれしくなって走り出してしまいます。子犬とキツネはかけ足でみゆちゃんの後ろから走ってついてきます。

 すると、子犬が何かを感じたのか、みゆちゃんにはなしかけます。

「みゆちゃん、こっち。こっちの方からみゆちゃんのにおいがするよ」

 子犬はまたクンクンとはなをならして、みゆちゃんの前を歩いて行きます。

 すると、いっぽんのスミレに、クローバーの葉っぱがひっかかっていました。

 そのスミレは、まるでみゆちゃんにやさしくほほえみかけているかのようで、みゆちゃんはそのピンク色のスミレのかおりで、どこか気持ちが、あたたかくなりました。そして、みゆちゃんはそれをひろい上げて、子犬とキツネにはなしかけます。

「ありがとう子犬さんキツネさん。また一枚見つけることができた」

 みゆちゃんが子犬にうれしそうなかおをすると、子犬もキツネもうれしそうにみゆちゃんのまわりを走り回ります。

 そして少しおちついてキツネがみゆちゃんに言います。

「ねえみゆちゃん。あっちの方にもいっぱいスミレがさいてるよ」

 そう言って、キツネはまた前足をそのスミレがさいている方にむけます。

「あ、ほんとうだ」

 みゆちゃんはキツネのさす方を見ると、そこには木からもれたお日さまのひかりにつつまれるかのように、スミレが森のおくの方にむかってのびて行っています。

 みゆちゃんはそのスミレの道をスミレのかおりにつつまれるように、歩いて行きます。

 スミレの道を歩いて行くと、だんだんと木のかずが少なってきて、いつの間にか森をぬけました。

 そして森をぬけたところに、どこかで見たことのある家を見つけました。

「あ、あれおばあちゃんちだ」

 みゆちゃんはそう言うと、その家の方に走り出していってしまいます。

 でも、そのうしろに子犬とキツネはついてきませんでした。

 みゆちゃんはそれに気が付いてうしろをふりかえります。

「どうしたの? 子犬さんキツネさん」

 子犬とキツネは口を揃えて言います。

「ぼくたちはこの森からは出れないんだ。だからみゆちゃん、ここでさよならなんだ」

 みゆちゃんは今にも泣いてしまいそうになってしまいます。

「どうして? いっしょにいけないの?」

 子犬とキツネはくびをふります。

「ぼくたちもお母さんからはなれられないんだよ。それに、森にくればいつでもあそべるよ。だからいつでも、遊びにきてね」

 子犬とキツネはそういうと、とちゅうでなんども立ち止まり、みゆちゃんの方をふりむきながらも、森のおくに走っていきます。そして、みゆちゃんはそれを手をふりながら見おくります

「ありがとう、子犬さんキツネさん」

 少しかなしくなったみゆちゃんですが、それでもなみだをこぼす事なく、おばあちゃんの家まであるき、そしておばあちゃんにお家まで送ってもらいました。

 でも、みゆちゃんは少しざんねんでなりませんでした。

 なぜなら、とんで行ってしまったさいごの一枚の葉っぱが見つからなかったからです。

「さいごの一枚、どこにいったのかな?」

 そして、おばあちゃんと歩いているうちに、みゆちゃんはお家につき、そしてお家に入ってお母さんのへやに入っていくと、ベットの上のお母さんは、やさしくほほえみながら一枚の葉っぱをもっています。

「あ、お母さん! その葉っぱどうしたの?」

 みゆちゃんはそう言うとお母さんにかけよります。するとおかあさんはやさしくみゆちゃんのあたまをなでながら、ほほえみみゆちゃんに言います。

「少し前に、まどから風にのってはこばれてきたのよ」

 みゆちゃんは手にもったほかの三枚をお母さんに見せます。

「森の中でね、お母さんに四葉のクローバーさがしてたの。ほら、これがほかの三枚だよ」

 お母さんはみゆちゃんの手にもったクローバーの葉っぱを見て、おどろきました。

「まあ、みゆ。森の中に一人で入って行ったの?」

 みゆちゃんはあたまをふってこたえます。

「ううん。子犬さんとまっ白な毛のキツネさんといっしょだったよ。それにね、ピンク色のスミレがいっぱいさいてたの! お母さん。はやくげんきになって、いっしょに森に行こう。お母さんがはやく良くなるようにって、みゆ、四葉のクローバーにおねがいするんだ」

 お母さんはほほえみながら、みゆのあたまをやさしくなでます。

「ありがとうみゆ。でも、一人で森の中にはもう入っちゃだめよ。いい? こんど行くときはお母さんもいっしょ。だから、その子犬さんとまっ白なキツネさん。それにピンク色のスミレ畑にもつれて行ってねみゆ」

 みゆちゃんは大きくうなずき、えがおでこたえます。

「うん。お母さんはやくよくなってね! そしたら子犬さんとキツネさんといっしょにスミレ畑に行こうね!」

 そしてみゆちゃんはお母さんの手の中からさいごの一枚のクローバーの葉っぱをもらい。それを形よくまとめて、押し花にしてお母さんのびょうきがはやくなおるようにまいにちおいのりしました。

 そしてみゆちゃんのおいのりが天にとどいたのか、お母さんのびょうきはすっかりよくなり、子犬とキツネといっしょにスミレ畑にいきました。

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