第11話 西暦2300年 ウォッチメン
まただ。 N氏はまた誰かに見られている感覚を味わった。
これでいったい何度目であろう、その気配は辿るといつも動物に行き着く。
ある時は野良猫、ある時は野良犬、またある時は烏に雀、とにかくなにがしかの生き物からこちらを伺っているような気配を感じるのだ。
そういう生き物は決まって一匹で行動しており、鳥でも群れていないのが特徴だ。
そういえば、子供の頃には五月蝿くてたまらなかった繁殖期の野良猫のけたたましい鳴き声を聞かなくなった。いったい何時からだ?気づかれないよう注意深く見回せば、至る所に動物がいるが、どれもまるで連携してこちらを見張るように一匹づつ、視界をカバーするようにある程度の距離をおいて居る。
勘違いなどではない、確実にこちらを見ている。奴等に見られている。見張られている。いったい何故?なんの目的で?
感情の見えないつるりとしたプラスチックのような光沢の目がこちらを見ている。そういえば奴等が鳴いているのを聞いた覚えがない。あれは本当に生き物なのだろうか?姿形は同じでも得たいの知れない何かではないのか?
不気味だ、あまりにも不気味すぎる。逃げなければ。何処へ?何処だって良い、とにかく奴等の監視の届かない場所へ逃げなければ。
引っ越したN氏はアパートで荷ほどきをしながらふと視線を感じて振り返る。
ああ!窓に!窓に!
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2600年台に公開されたN国の議事録には驚くべき記録が存在していた。
それは身近にいきる動物にナノマシンを打ち込み、生体監視カメラとして利用しようというものである。2300年代は脳科学の進歩が著しく、一部の寄生虫をモデルに、小動物の制御を乗っ取り自在に操作するという技術が治安維持の名の元に導入されていたのだ。
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