第4話 西暦2100年 戦艦大和の復活

人の歴史は戦争の歴史、そして戦争の歴史は技術の進歩の歴史でもある。

歴史の転換点とは新技術の実用化された時であり、往々にして人の死が付いて回るものだ。


私が『大和』の名を受け継いで建造されたのも、やはり新たな技術が戦場にもたらされた結果であった。

軌条加速投射砲。所謂レールガンと言うヤツだ。


事の発端は前世紀、世界の各地でナショナリズムが横行し、どこの国も自国の事で手一杯になった結果、我が国はその最大の友好国と決定的な決裂を迎える事になった。

今までは「俺たちがお前らを守ってやる。だから武器なんて持たずに大人しくすっこんでいろ」と、こちらの頭を押さえつける形で制限していたのが解放されたのだ。

言ってはなんだが平和ボケの多い国民である。最大の庇護者が去ったら、すぐ隣にある危険に対してアレルギーのように過敏に反応した。

その結果が技術大国と自慢する国の技術の粋を集めた新兵器開発である。


平和とは、まず自分達の安全が保証されてこそ。直接的な核兵器こそ配備しなかったが、原子力機関を採用した超高出力艦艇の建造決定は驚くほど反対意見も少なく、スムーズに決まった。

その結果として建造されたのが、対艦・対地用の大型から対航空機用の小型まで、針ネズミのように至る所にレールガンを装備した『海上移動要塞』すなわちレールガン戦艦である。


かつての戦争では自らの陣営が招いた戦闘機の時代の到来により、世界最大とも呼ばれた戦艦はその真価を発揮することなく没していった。

だが今度ははじめから対航空機を想定している。各所に配備された小型・高初速のレールガンは敵航空機を射程に納めたと同時に撃墜するだろう。

たとえ大気圏外から突入してくる弾道ミサイルだろうと迎撃してみせる。

再び戦艦が戦場の主役となる時代がやって来たのだ。


我が国最大の弱点である人員不足も私のような超高性能AIの搭載によって百人足らずで三百メートル級の巨体を運航できるようになった。

最早負ける要素が見当たらない。私は今日も出撃命令が下るのを今や遅しと待ちわびている。








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地球の地図を書き換えなければならなかった第三次世界大戦にて投入された新兵器群において、やはり最も時代を変えたと言える兵器はN国軍の投入した『超大型戦略狙撃機 八咫烏』であろう。

元々は地震の頻発するN国において、迅速に救援物資を運搬できるように開発された輸送機だったのだが、その莫大なペイロードを見込まれて『自国領空内からの敵領土直接狙撃』という任務のために馬鹿げた改造が施されたのだ。宇宙空間と見なされない限界高度まで上がり、超重量弾頭をレールガンによって発射する……その威力は隕石衝突に例えられ、海を求めて戦争を開始した隣国の大地を抉り飛ばし、焦がれた海をプレゼントしたほどである。

クレーターに流れ込んだ海水は、上昇していた水位を下げ、舞い上がった塵は太陽光を遮り深刻化していた温暖化を食い止めることになった。それ以上の未曾有の被害を伴って。

レールガンの初速と弾丸の重量に制限条約が締結される原因となった出来事である。

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