水越風 〜ミナコシフウ〜

2月13日


「ぐすっ、プロデューサー」


「泣くのはまだ早いよ、風ちゃん」


 今日は水越風ちゃんのアイドルになって初めて発売されるソロ曲の収録日だった。


「わたし、もう収録は出来ないと思っていたから。すごく、すごく嬉しくて」


「本当に大変だったからね」


 風ちゃんはこの間まで別のプロジェクトに所属していた。風ちゃんはそのプロジェクトで初めてCD化までこぎつけたアイドルだったが、トラブルにより白紙になってしまった。その後、風ちゃんは別のプロジェクトに移ることになったが、CD化にこぎつける事は無く、そのプロジェクトはプロデューサーの退職によって解体。そして、巡り巡って先日、風ちゃんは僕のプロジェクトへ移籍してきた。


「僕は風ちゃんを不幸にはさせない」


「プロデューサー」


 僕は落ち込んだ花火を安心させるときのように風ちゃんの頭を優しく撫でた。

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