雪山岳 〜ユキヤマガク〜
水原君は俺の思った通り素晴らしい才能の持ち主だった。
前にプロデューサーから聞いた話だと、CDの収録2日前、つまり水原君が事務所に入っておよそ5日目で水原君は歌詞と音程をほぼ完ぺきに覚えて来ていたらしいのだが、今回は僅か2日という短期間で俺のソロ曲の歌詞と音程、更に振り付けまでも少し手直しするだけで舞台に立てるほどまで仕上げていた。
「プロデューサー、水原君のことだけどさ~」
「何かありましたか?」
「そんな怖い顔をしないでよ。らしくないな~。水原君に悪いところは全くないから安心して」
「そうでしたか。口調から嫌な予感がしたもので何かトラブルが起きたのかと」
トラブルではないがその予想はあながち間違ってはいなかった。
「水原君の才能を間近で見て考えたんだけどさ~、もう一曲追加しても良い?」
プロデューサーはその提案に目を見開いて驚いていた。
「ダメとは言いませんが、現段階では良いとも言えません」
「2日間共とは言わない。俺は水原君の、響の実力を見てみたい。見せてやりたいんだ」
数年前、俺が舞台に立てなかったあの時の悔しい気持ちを響に晴らしてもらおうなんて気持ちは一切無い。
ただ、折角巡ってきたチャンスで自分の最大限出すことの出来る実力を出し切れずに終わってしまうのは舞台に立てないこと以上に悔しさが残ると俺は思う。
「雪山さんの熱意はよく分かりました。ただ、今ここで決めることは出来ません。24日のライブを見て判断します。良いですね?」
「わかった」
俺はその後、響に連絡をしてこの内容はあえて伏せて課題を与えた。
「……。今言った2曲もライブ前日までに練習しておいて~」
響ならこの課題を難なくクリアしてくれると信じて、俺もライブに向けた最終調整を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます