縁崎淵乃 〜ヘリサキフチノ〜

「マカさん、ちゃんと練習してください」


 レッスンルームに僕が真上・アンジェリーノさんを怒鳴る声が響いた。


「んも~、フッチーは頑固な頑張り屋さんなんだ・か・ら~」


「頑固ではありません! マジメと改めてください。そして練習をしてください。クリスマスライブまであと2週間ですよ」


「わかっているよ~。で・も~フッチーなら一発本番でもわたしと息をピッタンコさせてくれるでしょ~?」


「出来ます。プロですから。でも、練習をサボっていても良い理由にはならないです」


「そんなに怒らないでよ~。わたしも今から本気出しちゃうから~」


 全くやる気を感じさせないふわふわとした口調でマカさんはそう言った。


「今日のレッスンは身体を休める練習~」


「ふざけないでちゃんとやって下さい!」


 またしても僕の怒鳴り声がレッスンルームに鳴り響いた。

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