氷野涼 〜ヒノスズ〜

 ぼんやりと人々の顔が見える舞台の上を3つの光が目まぐるしく舞い踊っていました。


「それでは、発表します」


1つしか歳の差がないのにもかかわらずテレビや雑誌で活躍している乙町十々ちゃんに4つ目の光が照らされていました。


「第4回『今日のシンデレラ』は」


 舞台上にいない人からしてみればただの一言に過ぎないのかもしれないその一言にわたしを含めた第4回今日のシンデレラ出場者は息をのみました。


「……」


 誰の名前を言ったのかはわかりません。ただ、3つの光は私を照らしてはいませんでした。


 わたしは瞳から涙をこぼし、その涙は枕を濡らしました。


「あれ?」


 目が覚めたわたしの目の前には立派な額縁に入れられた和水プロダクションとの契約書の控えが飾ってありました。

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