吠戸甘奈 〜ハイドアマナ〜

 放課後、いつもだったら寄り道しないで事務所に行く私は学校に残って誰もいない教室の窓から外を眺めていました。


「あっ! 来た」


 学校の駐車場に事務所所有のロケバスが停車して、中から『14’s Girlsフォーティーンガールズ』というユニットを組むことになった音尾文美ちゃん、鈴原真希ちゃん、唯要ちゃん、南条菊花ちゃん、そして、真矢咲プロデューサーが降りてきました。


「甘奈ちゃん! おはようございます!」


 真っ先に控え室となっている私が普段過ごしている教室にやって来た文美ちゃんはいつも通り大きな声で元気に挨拶をしてくれました。


「うん。おはようございます」


 続いて真希ちゃん、要ちゃんがやって来て、最後にアイドルとして初めて大きな仕事をする菊花ちゃんが初々しい表情でプロデューサーと一緒にやって来ました。


「それでは、私はスタッフの方と準備をしてきますので皆さんは更衣室での着替えが済みましたら時間までこちらの教室でお待ちください」


「は~い」


 みんな学校が終わってから真っ直ぐ来ているはずなのに無駄に元気良く返事をして『14’sGirls』のデビューシングルに収録されるプロモーションビデオ撮影までの間、衣装に着替えてお喋りをしてだらだらと時間を浪費しました。

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