新原和音 〜ニイハラワオン〜

『人気新人女優 新原和音』


 私はこの肩書が好きではない。あえて言葉を濁してみたけれど、はっきり言ってこの肩書は事務所NGを出して欲しいほど大嫌いだ。


 一昨年の夏フェスで『茶番』とファンの皆さんの間で呼び親しまれているコーナーに私は参加していた。


 それをどうやらドラマや映画をキャスティングするお偉い様が見て、私の演技に何故だか深く感銘を受けたようでその年の夏フェスを終えてから私のスケジュールには映画やドラマといったアイドルではなく女優の仕事が多くなった。


 そして、あれよあれよという内に私はあの肩書を与えられた。


 決して演技が嫌いという訳ではないけれど、私の本職はアイドルなのだからはっきり言って歌のレッスンや歌番組の出演よりも多くスケジュールを占める女優の仕事は断ることで自分の首を絞めかねない仕事であるとはいえ、私にとって苦痛でしかなかった。


 この問題は私一人で抱えられる問題ではないため、私はマネージャーに相談した。最初はマネージャーそしてプロデューサーという観点から少し我慢をしてでもアイドルと女優の二足の草鞋を履く事を勧められた。その説得で首を縦に振らない私を見たマネージャーは真矢咲という個人として私の立場で考えてくれた。


「分かりました。では、私の方から社長に直談判しようと思います」


 マネージャーはそう言うとすぐに事務所の社長に私の気持ちを伝えて、女優の仕事がアイドルの仕事に影響しない範囲で活動できるように調整してくれた。

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