真矢プロジェクト女性アイドル編

青桐木葉 〜アオギリコノハ〜

「顔が強張っていますが大丈夫ですか?」


 早朝の高速道路でバックミラー越しに私、青桐木葉を見たマネージャーでプロデューサーの真矢咲は不安そうな口調でそう聞いてきた。


「大丈夫、気にしないで」


 と、私は彼を心配させまいとそう言ったが、実のところ足の震えが止まらないほど私は今日から行われるドラマの撮影に緊張していた。


 それもそのはずで、私は今から8年前にメインキャストとして抜擢された本を読む人ならば一度はその名前を聞いた事があるほど有名な原作のあるドラマで自分の人生が狂ってしまうほど大きな失態を犯してしまった。


 8年前そのドラマは原作に忠実に話が進められ、全10話の残り2話で私の演じる役の子供が亡くなることがきっかけとなり話がクライマックスに向けて加速していくはずだった。しかし、たとえ役であったとしても自分の子供が亡くなるという演出が気に食わなかった私の母親は自分たった一人のわがままで原作者や監督に無理矢理話をつけて私の演じる子供が亡くならない脚本に変更してしまった。


 その後の事は言わなくても想像がつくのではないだろうか? 原作に忠実に進められていたために最後で原作とは大きく異なるストーリーになってしまったそのドラマは日本各地から多くのバッシングの声が上がりテレビ局は異例の謝罪会見をする事に。そして、何処から情報が漏れたのか週刊誌が私の母親が無理矢理脚本を変えさせたことを取り上げ今度は私が大きなバッシングを受けることになった。


 私はその後、芸能界から消え、家族は崩壊し、私は父親に引き取られた。


 そんな時、今のマネージャーがこの事態を知らずに私を街中でスカウトし、どんなコネを使ったのか私をアイドルとして押し上げていった。


「なんて人生だ」


 心の中でそう呟いているといつの間にか車は現場に到着していたようで駐車場に停車していた。


「青桐さん、私はあなたをスカウトしたあの日からこの世界に戻すことを夢見ていました。次はあなたが幼いころからの夢だった宇宙一の女優という夢を叶えて下さい。今日から私もその夢を叶えるお手伝いをしますから」


 マネージャーにそう言われた私の目から自然と涙がこぼれ落ちてきました。

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