源則義 〜ミナモトノリヨシ〜



 侍をモチーフにしたアイドル源則義は他のアイドルが使っている事務所本館のレッスンルームではなく、本館とは連絡通路で繋がっている別館に用意された夏フェスのステージとほぼ同サイズのステージセットを使いソロ曲の練習をしていた。


「よしっ」


 歌を歌いながら殺陣を行うという派手かつ体力を大量に消費する演出に則義は汗は掻きながらも息切れ一つせず踊りきり、達成感を感じていた。


「やり切ったな」


「あぁ、やったぜ。やり切った。なんて言えるかよ。本番はまだ先だぜプロデューサー」


 歌のイメージに合わせて鎧の様な衣装を着ていた則義はステージ上であぐらを掻きながらそう言った。


「その格好だと完全に武将だな」


「プロデューサーもそう思ったか。今年の衣装は今まで以上に凝ったデザインだよな」


「よく出来てはいるが、重かったり蒸し暑かったりしないか?」


「ライブ衣装としては少し重いかもしれないけど、見た目ほど重くはないな。それに通気性も良いから衣装の中が蒸し暑くなったりはしないな」


 それを証明するために則義はわざわざ立ち上がり、バク転をしてみせた。


「あまり派手に動くなよ」


「あぁ、わかってる」


 則義は貫禄がありながらも年相応の笑顔でそう言った。

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