長谷秋喜 〜ハセシュウキ〜
「お疲れ様でした」
シャワールームで汗を洗い流し、レッスンルームで別アイドルのレッスンを始めていたトレーナーに礼をした長谷秋喜は帰る前に事務所1階にある喫茶店に行った。
「いらっしゃい」
「いつものお願いしても良いですか?」
「かしこまりました」
仕事を終えた事務員や息抜きでやって来た秋喜とは別プロジェクトのプロデューサーがポツリ、ポツリといたが、店内は和水プロダクションのアイドルが歌う曲のクラシックバージョンがBGMとして流れているだけで静かな空間が作られていた。
「おまたせしました」
「ありがとうございます」
秋喜の前に注文していたココアが出され、猫舌の秋喜はゆっくりと息を吹きかけて冷ましながら少しずつ時間をかけて飲んだ。
「レッスンの進み具合はどうだい?」
「87%くらいですかね」
「昨日より5%も上がっているじゃないか」
「まだまだですよ。1週間前までに100%に仕上げないと」
「あまり頑張りすぎると身体に毒だからね」
「はい、気を付けます」
スプリングスの2人を除くとこの喫茶店で初めての常連客である秋喜にとってレッスン後のココアと千歳との雑談は疲労した身体を癒やすために欠かせないものになっていた。
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