野口航大 〜ノグチコウダイ〜

 野口航大はその日、朝から夕暮れまでドラマの撮影をしていた。


「航大くんお疲れ様。この後も?」


「夏フェス近いんで自主練っスね」


「学生とアイドルの両立だけでも大変なのにドラマの撮影まであると疲れるでしょ?」


 共演者の男は自分の息子と言ってもおかしくはない年齢の航大を心配してそう言った。


「大丈夫とは言い切れないっスけど、俺にとってアイドルって仕事は苦じゃないっスから」


 ドラマ撮影時とはまるで違う独特な口調でそう言う航大に男は優しく微笑みながら言った。


「そういえば、撮影前に航大くんのマネージャーから夏フェスのチケットを頂いたから遊びに行かせてもらうよ」


「本当っスか? じゃあ、いつもより余計に恥ずかしいところを見られないようにしないといけないっスね」


 尊敬するその男が夏フェスに来ることを知った航大はこの日のレッスンからいつも以上に気合を入れて本番に備えた。

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