兎野春 〜ウサギノシュン〜
和水プロダクションの事務所から徒歩2分。事務所と同じく和水プロダクションが所有するそのビルはプロダクション関係者のみが使用可能なジムであった。
そのシステムは普通のジムに行くと一般の人の目を気にしなくてはならないアイドルたちにはとても好評であり、中でもアイドルになる前から身体を鍛えるのが趣味であった兎野春はほぼ毎日通い詰める程であった。
「プロデューサーじゃないか、珍しいな」
春は誰かを探しているかのように辺りを見渡している川野流を見つけるなりそう言った。
「春、やっぱりここにいたか」
流の探し人は春だったようで、流はトレーニング中の春に近づいて行った。
「あれ? もしかしてプロデューサー怒ってる?」
「あぁ、怒ってるよ。春がトレーニングばかりに勤しんでレッスンを無断でサボったのは今回で3度目だからな」
流のその言葉で春は本日初めてトレーニングルームの時計を見た。時計の針は午後7時を指していて、レッスン予定時刻から3時間が過ぎていた。
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