飛達春乃 〜トビタチハルノ〜
「いやぁ、春の日差しが暖かいね〜」
「それは否定しないけど、ここ何処?」
ゴールデンウィークのど真ん中に運良く休みが被った飛達春乃と烏居彩香は事務所周辺を散歩していたはずだった。
「う〜ん、何処だろ? 少なくとも日本なのは間違いないよね。圏外だけど」
「それは否定しな〜い」
迷子になっているというのにいつも通り適当な彩香に春乃は頭を痛めながらもほんの少しだけ心に余裕を持たせることができていた。
「このまま帰れなかったら大変だね〜。きっとプロデューサーが行方不明届けを提出しながら血眼になって探して、さいちゃん達を探しにこの辺まで来たプロデューサーやケーサツの人もみ〜んな迷子になっちゃって、も〜仕方ないからさいちゃんが力を発揮してさいちゃん王国を建国しちゃったりして〜」
「はいはい、つまらなくて長い冗談はその辺にしてさっさと帰り道を探すよ」
「う〜ん、冗談抜きに帰り道は見つからないと思うな〜」
彩香はいつも通り適当な口調ながらもシリアスな声色でそう言った。
「どういう事?」
彩香の言葉に春乃はゴクリと息を飲んで聞き返した。
「だって〜いまさいちゃん達が歩いているのが帰り道だも〜ん。もしかしてはるりん迷子だと思ってた? まっさか〜。さいちゃんでも帰り道位は覚えて歩いてるよ〜」
シリアスな雰囲気は何処へやら当たり前のようにそう言った彩香に呆れつつ春乃は彩香の後について見知った道へ戻り涙目になりながら彩香を引っ叩いた。
「いった〜い。はるりんが叩いた〜‼︎」
今日も和水プロダクションのアイドル達は平和に暮らしていた。
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