富口美々 〜トミグチミミ〜
「早く日曜日にならないかなぁ」
それは富口美々がほぼ毎日言っている口癖だった。
「明日と明後日を乗り切れば日曜日だろ」
「そんな事言われても待ちきれないんだ」
「まぁ、その気持ちはわからなくもないけどな」
「なんたって次の放送は追加戦士の登場回だからな!」
美々は目を輝かせてそう言った。
「どんな人だろうな? あぁ、ワクワクが止まらないっ」
物心ついた時から特撮をこよなく愛している美々が十数年間毎週欠かさず観ている特撮番組の次回の展開に胸躍らせていると、美々と同じく大人になっても特撮番組を欠かさず観ている川野流が美々の溢れ出る興奮を抑えるように美々の両肩に手を置いた。
「まぁ、落ち着け。そして、驚かずに聞いてくれ。実はな……」
流が言うの躊躇っているせいで部屋には時計の秒針が進む音だけが淡々と鳴っていた。
「その特撮番組『エイト』へのゲスト出演が決まった。しかも、今後の展開に関わる重要な役になっているらしい」
大好きという言葉では言い表せないほど特撮を愛し、特撮に出演する為に芸能界に入った美々にとって喜ぶべき仕事に美々は静かに涙した。
「プロデューサー」
「なんだ?」
「変身は……出来ますか?」
「無理だな」
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