四宮歩良音 〜シノミヤフラネ〜

「奈々の言葉を間に受ける必要がありそうだな」


所属アイドルのスケジュールの都合上、2日に分けて行われた身体測定の結果が和水プロダクションの全プロデューサーに渡され、川野流の手元にも川野プロジェクトのメンバーの結果が届いた。おおよそのアイドルたちは平均値かそれ以下の体重だったが、ある2人のアイドルの結果を見た流は悪い意味で想像以上な結果に頭を抱えた。


「ごめんなさい。歩良音が食べ過ぎた所為で」


「いや、謝るな。こうなる事がわかっていながら何も手を打たなかった俺の責任だ」


「あの、この結果だとしばらく食べ歩きのロケは……」


少し涙ぐんだ歩良音の問いに流は少し考え込んで答えた。


「ロケの人気は知ってるだろ? だから俺としてはその仕事を減らしたいとは思わない。だからと言ってこの事態を放置する事もできない」


「そうですね」


「奈々の言葉を参考にするなら、スポーツバラエティの仕事を増やしてロケで摂取したカロリーを消費してみるのはどうだ?」


とっさの思いつきではあったが、それには幾つか問題があった。


「でも、今ってあまりスポーツバラエティは多くないですよね? それに出れたとしてもゲストですし。改編期が終わったばかりですからレギュラーを取るのは難しいですよ」


「確かに地上波の放送なら不可能だろうな。でも、それは考えなくて良い。確か、真矢の所でスポーツバラエティのネット配信番組の新レギュラーを探してるアイドルがいたはずだ」


「でも、この時期ですよ。埋まっているんじゃないですか?」


「それは心配ない」


流は敢えてその理由は言わなかったが、奈々と歩良音がその番組にレギュラー出演するようになってから川野プロジェクトのメンバーはその番組送りにならないように今まで以上に体調管理に気をつけるようになったという。

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