琴花樹 〜コトハナイツキ〜
「ただいま」
同じユニットで同級生の国宮美佳、熊野恋歌と事務所の所有する女性寮の前で別れて自分の部屋に戻った琴花樹は誰もいない部屋にあまり元気のない寂しげな声でそう言った。
「オフとかい〜や〜だ〜」
部屋着に着替えずにベッドへとダイブした樹は『フ☆レ☆ン☆ド』の中で唯一明日の予定が無い事実に対して幼い子供のように足を上下に動かして駄々をこねていた。
「うるせぇぞ、イッキ!」
自分では気付いていないようだが随分と大きな音を出していた所為で隣の部屋に住む菊水唯が壁を殴って威嚇してきた。
「姐さぁん、一機減っちまいましたぁ」
「彩香てめぇ、何でゲーム再開してんだ!」
「姐さん、今のはさいちゃんと再開を掛けたのかなぁ? ニヤニヤァ〜」
「オレはそんな器用な事できねぇよ。おい、イッキ、暇ならこっち来てアホ共の相手してくれ。オレ一人じゃ手に負えねぇ」
壁を挟んでいるのにもかかわらずダイレクトに聴こえる隣人たちの声で失われていな元気をほんの少し取り戻した樹は寂しさとは真逆の場所に常に留まっている3人のもとに向かった。
「こっちよりも唯姐さんの方がうるさいんですけどぉ」
「けどぉ」
「けどけどぉ」
「てめぇら、いい度胸じゃねぇか。コントローラー持て! 3人まとめて相手してやる」
樹の1日は今日もうるさく過ぎて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます