神橋実里 〜カミバシミノリ〜
「やぁ、4月だね。桜は咲いてないけど」
事務所の窓から外を眺めていた神橋実里はいつも通り適当な事を口にしていた。
「あの木に桜の花が咲く訳が無いだろ。アレはイチョウの木だぞ」
「イヤだな〜知ってるよ。あっ! あの木に花は咲いて無いけど、わたしたちの話に花が咲いたね」
「そんな事より、最近はオーディション組のデビュー関係の仕事で顔を出せていなかったが、レッスンは順調か?」
プロデューサー兼マネージャーの川野流が実里の適当話を適当にあしらって別の話を始めるのはいつもの事だったが、今回は割と真面目な話があった為いつもより数倍適当に話を打ち切っていた。
「もちのろん! わたしにしてはちょ〜大マジメにれんしゅ〜してるよ。ユニット組むなんて初めてだからキンチョーで朝も起きれな〜い」
「聞く限りだと実里に心配する必要は無さそうだな」
適当な言葉からそのような解を導き出した流の肩に実里は不意に頭を乗せた。
「プロデューサーの肩は丁度良い頭置き場だなぁ」
「重い、どけろ」
「いや〜ん。女の子に重いは禁句だよ」
いつも通り適当な事を言った実里だったが、一拍置いて、
「キンチョーしてるのはホント。でも、ちょ〜頑張るから目を離さないで見ててよ」
いつもは大真面目にふざけている実里の大真面目な言葉に流は不覚にもドキりとしたが、すぐにいつもの調子に戻った実里を見てその感情は宇宙の果てまで吹き飛んでいった。
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