SECOND HALF

sirius2014

第1話

ちょっと長くなるけど、俺の話を聞いてくれないか。文章とかあまり上手くないけど、一所懸命書くから。


まず、簡単に俺の自己紹介をしておく。

俺の名前は不破賢太郎。年齢は38歳。身長186センチで体重はおよそ0.1トンある。

都内の中堅の建設会社に勤めているサラリーマンだ。

ルックスは自分ではまあまあだと思ってる。仲の良い友人は「イケメンのゴリラ」と言ってくれるし、口の悪い友人は「ゴリラにしてはイケメン」と言ってくれる。(俺は褒められてるって思ってる。)

言葉遣いが少々荒いのは勘弁してくれ。高校・大学と荒っぽい環境で過ごしてきたし、仕事がら現場の職人さんたちと話すときには、あんまり丁寧な話し方よりも、この方がお互い話し易いんだ。


俺はそこそこ進学校の都立高校に入ったんだけど、でかい体を生かそうと思って、ラグビー部に入部した。元々弱小ラグビー部だったし、体がでかくて足もけっこう速かったから、すぐレギュラーになった。ポジションはナンバー8。ラグビー部の2年先輩に清川という人がいた。清川先輩は、体はすごくがっちりしていたんだけど背が低くて、だからポジションはスクラムハーフだった。

試合でスクラムを組んだときは、俺がボールをキープしながらタイミングを見て、ボールをピックアップして突進したり、清川先輩にトスしてそこから展開したりして、俺と清川先輩の息はぴったり合っていた。

清川先輩は高校卒業後、1浪して合格した大学のラグビー部に入った。俺も清川先輩の後を追うように、同じ大学に現役で合格して、ラグビー部に入部した。だから、高校では2年先輩だった清川先輩は、大学では1年先輩だった。

その大学のラグビー部も高校と同じでやっぱり弱小ラグビー部だったから、俺は1年生の後半にはもうレギュラーポジションを確保していた。俺が入部した頃、スクラムハーフは4年生の先輩が先発メンバーだったんだけど、清川先輩はその先輩と交代で使われていて、4年生の先輩が卒業してからは、清川先輩が先発メンバーになった。

チームには個性豊かなやつらがいっぱいいた。鋭いパスと正確無比なキックでチームを自在に操るスタンドオフ桐原とか、守りの最後の砦で攻撃の切り札のフルバック本郷とか、タッチライン際を切り裂いて駆け抜けるトライゲッターのウイング工藤とか、背は低いが全身筋肉の塊のようなフッカー岩村とか、他にも挙げればきりがない。高校・大学時代のラグビー部のチームメイトは、卒業後もたまに集まって飲んだり、一緒に旅行に行ったり、お互いに家に泊まったり、今でも最高の仲間たちだ。


部活の話が長くなったけど、実はあまり話の本筋には関係ないんだ。

清川先輩には4歳年下の妹がいて、俺がしょっちゅう清川先輩の家に遊びに行っている間に仲良くなって、そのうちに付き合うようになったんだ。確か、俺が大学3年の頃だ。

名前は清川加奈子っていうんだけど、本人は7文字しかない名前の中に一文字おきに4つもカ行の文字があって、なんだか固いし噛みそうな名前だからって言って、あまり気に入ってなかった。

だから俺は、呼ぶときはいつもカナって呼んでて、本人もそう呼ばれるのが気に入っていた。

カナは俺の名字が柔らかい語感ですごく気に入ってた。だって、不破って、なんだかふわっとしてていいでしょう、とか言うんで、俺はいつもおやじギャグかよって、突っ込んでた。

俺は大学を卒業して今の会社に無事就職した。同じ年にカナは大学の薬学部に入学して、薬剤師の資格を取って卒業後は病院の薬局に就職した。今と違って当時の薬学部は4年制だったから、俺が就職した4年後のことだ。

で、就職して俺が5年、カナが1年経った頃、そろそろ多少の貯金もできたし、結婚するかって言うことになって、俺とカナは結婚した。

披露宴では、俺の高校・大学のラグビー部仲間ばっかりで、事情を知らない親戚の人たちは、新郎側のテーブルがでかくてごつい男ばかりなので面食らっていたっけ。

こうして清川先輩は俺の義兄になった。

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