戯言

森村直也

心霊写真考

以前もぼんやり考えたのだが「心霊写真」の影響について考える。心霊写真とは不可思議現象が写真として画像化されたものであり、もちろん映像版もある。不可思議現象が捉えられたものとは言っても、画像は画像であり、映像は映像だ。その画像や映像を持っている/見たことにより心霊現象が起きた場合、何がその引き金となるのか。


なぜこんなことを考えたかというと。昔は画像は印画紙であり、映像はフィルムだった。媒体へ焼き付けたものであり、それと一緒に『念』といったものが焼きつくのだと説明されれば、なるほどと思ったものである。


しかしながら、昨今の『媒体』はデジタルである。しかも、JPGという形式の場合、不可逆劣化する。PNGにしろBMPにしろ、フォーマットが異なれば、データそのもののカタチが異なる。見た目は同一であっても、それは、『同一になるように表示しているから』に他ならない。


一枚の心霊写真がある。持つと呪われると噂されるほど、忌まわしい写真である。印画紙の『写真』がコピーされ、スキャンされ、拡散された。手にした目にした少女たちは、呪いの影響を受け始める。


こんなストーリーの場合、では、呪いとはどこに宿るのか。

(コピー画像、JPGには呪いは宿らないとする説の場合、定義から違うのでこの説は棄却される)


データに宿るのか、十六進数、0/1の中に埋め込まれるのか、無意識下に働きかけるような微細な違いが埋め込まれるのか。

JPGで有れば、微細な違いは飛んでしまう。BMPもPNGもフルカラーであるが、所詮デジタル。モニタの精度を上回ることはない。


逆のアプローチをしよう。

BMPは極論、ピクセル単位で色を決められるわけであるが、人為的に『心霊写真』を作った場合、そこに『呪い』は現れるのか。

本物の心霊写真と寸分たがわぬ画像をピクセル単位で作り上げた場合、それは影響を持つ心霊写真足りえるのか。


否、といいたくなるだろう。しかし、データから見た場合。本物の心霊写真と作り上げた写真をPC画面に並べた場合、そこに差異はないのである。


すると、心霊写真には、異なる『作用過程』があるのではないかと疑うことも出来る。『画像』『映像』そのものに呪いが宿るわけではなく、受け取る側が呪いを感じるか否か、という点だ。


先述したとおり、デジタル画像はフォーマットによってまったくデータが異なる。(AIの画像認識が難しい点のひとつもここにあるわけだが、ディープラーニングによる精度の高い画像認識はほんと、すごいとしかいえない)

しかし、『表示』は同一といってよいものになる。


この『表示』の『同一』は見る側にとっての主観である。つまり、呪いの有無も、見る側の主観により決まるという説を取ることもできよう。


主観は認識であり、認識は『知ってること』に基づくものである。『知らなかったのに呪われた』こんなパターンがあるのではないかともちろん、思うだろう。

友人から借りたビデオ。見ていたら何か気持ち悪くなった。怪奇現象が発生するようになり、原因を探っていくと…。

こんなパターンである。


もちろん、このようなパターンを筆者は否定しない。否定しないが、だから『映像に呪いが仕込まれていた』とイコールとは考えない。

このようなパターンの場合、主人公と友人は文字通り『友人』である。『友人』とは、ある程度同じ社会に属し、同じ知識、常識に触れている存在ともいえる。


何が言いたいか。これは、同社会に属するものが無意識に持つ共通認識の中に、『呪い』の発動原因があると考えることも出来るのではないか、ということである。



ここでまた逆を考えよう。

偶像崇拝のない、文化の人に石像が破壊された写真を見せよう。

彼らはそこに『壊れた石像がある』としか感じないはずだ。

たとえばその石像がお地蔵様だったとしよう。

日本人、日本の文化で育った人ならば、なんとなく嫌な気持ちを抱くだろう。

そして、何か悪いことがあったとする。

偶像崇拝のない彼らは『不運だった』で終わるだろう。

では、お地蔵様が壊れた写真を見た、日本人だったなら?


そこに呪いを感じたとしてもなんらおかしくはないのである。




人知を超えた現象を筆者は否定しない。説明のつけようもない現象が多数あることに心を躍らせる青春時代をすごしたのも事実だ。

しかし、こういう解釈ができることも否定は出来ない。




と、言いつつ。

応用できるよね。が字書きの性。

心霊写真の捏造、不安を煽る商法。捏造が何時しか真実になり、逆に孤立してみたら。サスペンスにも使えるのでは? 信じ込ませ拡散するのはどのような手段が。胡散臭いものや画像編集では見破られてしまう。見破られないためには。……呪いとは。無意識の共通認識とは。


「本物の心霊写真」とは。

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