第48話舞台
やってきた、R-1ぐらんぷり、一回戦の予選会場。
発表された出場者の中は、吉本興業や松竹芸能の芸人さんばかり。
芸人の名前の隣に「」で所属事務所が記載されていた。
その中にポツリと、
原田おさむ(大瀧エージェンシー)
と、書かれていた。
もちろん僕だけだった。
予選の結果はその日のうちに発表される。
今日の夜にも、この名前が残っていたら、合格。
二回戦進出だ。
もちろん名前がなければ、不合格。
また来年と、いうことになる。
出番の直前、用意してきたフリップを見直す。
見落としがないか入念に最後までチェックする。
周りを見渡すと、フリップ芸は僕だけではない。
たくさんの芸人がフリップを用意してきている。
そう、やり尽くされているのだ。
わかりやすいし、見やすい。
この大会のために、みんなあらゆる準備をしてきているのだ。
まさにこれが、プロの戦い。
舞台の袖で、自分の出番を待つ。
僕の前の出番の芸人さんの、ネタが終わる。
次は僕の出番。
ふぅーーーーっ。
と、深呼吸をした。
そして、勢いよく飛び出した。
・・・・掴みの数秒間、
喋り始めてすぐ、最初の笑いが起こった。
さらに、すすめる。
・・・・笑いが、切れない!!
僕の喋ること全てが、しっかりお客さんの笑いとなって返ってくる!!
フリップをめくる、そしてネタの転調の部分。
・・・・笑いが、跳ねる!!
跳ねるとは、どんどん笑いが大きくなって、変化してきているということだ!!
僕はここまできたら、もう止まらない!
用意してきた、 単語、全て頭の引き出しから引っ張り出し、舞台から放つ!
跳ねる!まだ跳ねる!
こんなに、こんなに、
こんなに、ウケたことない!
自分の準備してきたことが、やってきた事全てが、お客さんの笑いとなって跳ね返ってくる!
これは、夢じゃない!
現実だ!間違いなく、現実だ!
あまりの興奮からか、ネタの最中に失禁しそうになる!
僕の脳のてっぺんまで、アドレナリンが上がってくる!
笑いが跳ねる!まだ、跳ねる!
そして、最後のオチ。
ドカーーーん!
最後にでっかい笑いが生まれ、
「ありがとうございました!」
と、駆け足で舞台を去る。
その背中。
パチパチパチパチ!!!
今まで浴びた事のない、大量の拍手を受ける。
舞台を降りた僕は、すぐその場にへたり込む。
周りにいた芸人さんのほとんど、僕を見ていた。
「こんなに、笑いとってる、この芸人は誰だ?」
そんな目で、みんな僕を見ていた。
すぐに荷物を片付け、予選会場を後にする。
少しずつ、少しずつ、実感がこみ上げてくる。
やった!ウケた!
それも、人生で今までないくらいに!
最高に!究極に!
ウケた!ウケた!跳ねた!跳ねまくった!!
予選会場が見えなくなって、振り返って叫んだ。
「これでどうだ!!落とせるものなら、落としてみやがれ!!」
精一杯強がって言ってみた。
それほど自信があった。
これで落ちるなら、これで不合格なら、審査員、全員死ね!!
それくらいの笑いをとった。
確実に、確実に・・・・
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