第46話挑戦

そんなこんなしているうちに、その年の暮れに、

R-1ぐらんぷりの予選の時期が、またきてしまった。


昨年は、事務所を解雇され、フリーになったとたんに、

予選で爆笑をとったにも関わらず、1回戦敗退。


それまでずーーーーーーーっと、2回戦以上進出は達成できていたのに。


その時から、ずっと感じてきた。

もう、どんなにおもしろいネタをしても、通してもらえないのではないか?

無所属の人間に、もはや、これっぽっちのチャンスも残されていないのではないか?


それを言い訳にはしたくなかったが、その1度の落選が、ずっとこの1年のトラウマになっていた。


大瀧エージェンシーの大瀧社長が、

「大瀧エージェンシー所属でエントリーしてください。」

と、言ってくださった。

とてもありがたかった。

それで今年は、大瀧エージェンシー所属で応募させてもらった。


しかしもちろん大きな事務所ではないし、ほかに大瀧エージェンシーから出場する芸人もいなかった。

これで合格したなら、大瀧エージェンシーからは唯一の出場で、唯一の合格者となる。

はっきり言って、無所属となんら変わりない状況であった。


これで事務所の力もなんも関係ない、裸同然で、もう一度R-1ぐらんぷりに挑戦するのだ。

もう1度。

もし落ちれば、その時は、再び事務所の壁というものを変えられなかったと、そのことを呪ってしまうだろう。

そして、名前を貸してくださった、大瀧社長のご好意にも泥を塗ることになる。


絶対にとおってやる!

絶対に受かってやる!


R-1の1回戦の壁が、再び僕に立ちはだかる。

何度も乗り越えてきたはずの壁が、こんなに大きく、厚くなって、僕の行く手を遮る。


すんなりとは通してもらえなさそうだ。


面白いネタをするしかない。

笑わせて、笑わせて、そして、それでも結果はわからない。


審査員がダメと言ったら、それまでの世界なのだ。


それでも、挑戦するしかないのだ。


売れるとか、売れないとか、そんなところに到達する以前の、そのまた以前の話だ。


これは、俺の個人的な感情に、終止符を打つ戦いだ!!


無所属や、小さい事務所など関係なく、R-1の予選を突破できるのか?


僕にとっては、とても大きな戦いだった・・・・


だれもそんなに気にしちゃいないだろうが。

僕には、それほどの戦いだった・・・・




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