白で埋める

@nonn

第1話

苦手なもの。

中途半端に洒落た居酒屋でのバースデーサプライズ、原因不明の汚れ、自転車のベル。




何も考えたくない、見たくない。

このまま、ぐるぐるぐるっとまるくなって

眠ってしまって、そのまま目が覚めなければいいのに。


巻き返したい、驚かせたい。

何もかも上手くいってとにかくすごいひとになって、出世して、有名になって、全部のひとを見返せたらいいのに。


こんな帰り道には、

2つの反対側を向いた感情が私のまわりを

くっついたり離れたりを繰り返す。


電車の窓からみえるのは、

すっかり眠ってしまった家々と、

少しだけぼやけて遠ざかる何かの光。

駅。降りる人。降りる人を見る人。

降りる人を見る人を見る人。

降りる人を見る人を見る人を見る私。

閉まるドア。


どこで私は私になったの。

先天的な要因はそこに介在するのだろうか。

社会でみんなが当たり前に楽しんで、

もしくは、うまく適応しているふるまい方や

笑顔やコミュニケーションの一つ一つが

私にはこんなにも困難で。


苦しい、苦しい、苦しい。


再び駅。私の降りる、駅。

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