第124話 ウォータースライダー



「素敵な部屋! これだけのホテルを短時間で建設するなんてルイスさんってやっぱりすごい人です」


私は部屋の中の内装も素敵だと思ったけど、テラスからの眺めも抜群だった。山の上に建設してるから地平線が見える。


ホテルの人に無理を言って(タケルが!)ベッドを2つ増やしてもらったけど、スィートルームなので驚くほど広い。


「ナナミさん、あれが噂のウォータースライダーですか?」


コレットさんが方向の違う窓から指差して聞いてくる。コレットさんは初めて見るから驚いてるみたい。スリルがあって面白いのに!


「そうですよ~。とっても......ってあれ? 」


なんか思ってたのと違うよ。なんか変な気がする。どこがおかしいんだろう。

私は鞄の中から双眼鏡を取り出してウォータースライダーを見る。プールで泳いでる人はいるけど、ウォータースライダーは誰も使用してない。子供用と思われるの直線型の勾配の緩やかなウォータースライダーでさえ躊躇されてるようだ。これは私が思い描いてた通りの滑り台だ。


でもとぐろを巻いたウォータースライダーは動いてるように見える。あれって材質は何でできてるの?


「あれって『のびのびスライム』じゃないですか? 生きてますよ! ウォータースライダーってスライムだったんですね」


コレットさんが感心したように言う。違うよ! その『のびのびスライム』って何なの? 初めて聞くよ。あんな生き物のウォータースライダー、誰が滑るのよ~!?


ーーって言ってたけど、結局私が滑らされた。発案者が乗ってくれないととかルイスさんに言われて断れなかった。

浮き輪に座ってザーッっと、なんか中もウニョウニョしてる気がするから浮き輪に乗ってないと無理だよー!! でも滑り出したら、後は絶叫だけ。キャーキャー言ってるうちにプールへザッブン。


滑り台に流されてる水ってどうやってるのかな? すごいね~!? 本当に異世界でウォータースライダーを体験できたよ。

私が実験体としての役割を終えると、コレットさんやクリリ、タケルも次々と滑りはじめた。

カホさんとマリーさんは大き目の浮き輪を使って2人で降りてきた。本当に仲がいいですね。


遠巻きで見てた大勢のお客さんたちも安心したのか、それとも好奇心が抑えられなくなったのか次々とウォータースライダー目当てに並び始めた。えっ? 私? もう滑らないのかって? だいじょうですよ。みんなが並ぶ前から順番とってるから、もう一回は滑れるよ!


「この水着ってすごいですね。本当に水を通さないなんて!もう1着欲しいね」


私が言うとカホさんも


「水着着るの久しぶりだけど、全然恥ずかしくないです。これだったら普段着にも良さそうです」


と言った。日焼け対策にもなるし太いところも隠せるし少し高いけどお買い得品だね。


「君たちは男のロマンがわかってない! 水着なのに普段着と変わらないなんて邪道だ!」


タケルは実に残念そうに言ってるけど、ここには地球人の男性いないからね。誰からも賛同されなかった。









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