第113話 アイスクリーム用の冷凍庫が欲しい

花火に光るブレスレットは次々と売れていった。アイスクリームもかき氷も売れた。風鈴も数は少ないけど売れた。

朝日が昇り始めると通りを歩いていた人たちは波が引くようにいなくなっていった。


「さすがに眠たいね」


「うん。今日が休みで良かったよ」


クリリも眠そうに目をこすってる。

冷凍庫はルイスさんの従業員が店に運んでくれてる。彼らには本当に助けられたよ。


「ルイスさん、今日はありがとうございました。おかげで助かりました」


ルイスさんに頭を下げると


「いえいえ、王都まで一瞬で送ってもらえるんですからこのくらいの事するのは当たり前ですよ」


と言ってくれた。


「冷凍庫はこの辺りでいいですか?」


「はい。冷凍庫も中が見えたらアイスクリームが見えていいんですけどね」


「中が見えるですか? どうやって見えるようにするんですか? 魔法ですけか?」


そうか、ルイスさんに言われて気づいたけど魔法を使う方法もあるんだ。この世界は魔法が使えるんだよね。でも魔法のことがまだよくわからない私にはどんな魔法を使えばいいのか思い浮かばないよ。ここはやっぱり日本にあったアイスクリームを売る時の冷凍庫を再現できたらいいなって思う。


「開けたり閉めたりすると冷凍庫の温度が下がるんです。中が外から見えたら開けてからどのアイスクリームを買うか迷わなくていいでしょう? だからここをガラスにしてアイスクリームを見えるようにしたらいいと思うんです。冷凍庫を買ったところに作れないか頼んだけどそんなもの作ったことがないの一点張りで話にならなかった。ここの職人は新しいものを作るっていうのがないみたいですね」


私はこの間交渉した職人を思い出して愚痴った。あれは酷かった。私が女だからバカにしてたのかな。タケルも連れてけばよかった。


「素晴らしいアイデアなのに残念でしたね。田舎の職人は規格から外れたものを嫌うんですよ。どうです?よろしかったらこちらで作ってみましょうか?」


「え? 作れるんですか?」


「もちろんアイデア料でその冷凍庫は無料にしてくれるんだろうな」


私の言葉に重ねてタケルが尋ねてる。いやいやタケル、さすがに無料は無理でしょう。


「も、もちろんですよ。お金をいただこうなんて思ってませんよ。他にもアイデアがあったら是非話してくださいね。いくらでもお手伝いさせていただきます」


なんかルイスさんってタケルのこと恐れてる? ヘコヘコしてるみたい。タケルはルイスさんの事結構気に入ってるみたいだけどね。だって王都まで連れて帰るなんて、気に入ってなかったら絶対しないよ。

どんな冷凍庫がいいか話しあった後、ルイスさんたちはタケルが王都に連れて帰った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る