第94話 プリーモ商会の思惑




「えーと。ボールを買うのは別に許可とかいりませんよ。それとも安く売って欲しいってことですか?」


プリーモ商会も儲けにならない事はしないでしょう。定価で買えば売るとき高く売ることになる。私は極力そういうことはして欲しくないけど、輸送費とか考えたら仕方がない気もする。


「いえ、定価で買います。だからって高く売ったりしませんよ。安心してください」


ん? それだと儲けがでないのに商売人としてそれでいいの? 全然安心できないんだけど。


「それだと利益出ないと思いますよ」


「ボールで利益出そうとは考えてないから気にしないでください」


プリーモ商会、変ですよ。双眼鏡の時も私の代わりに売ってくれたけど、商売人が利益が出ないことをするはずがありません。

ショルトさんを見たけど答えてくれません。タケルもいないし困ったなぁ。

アルヴィンさんは話は終わったと思ったのか、店内を物色し出した。


「ショルトさんどういう事なんですか?」


私がアルヴィンさんに聞こえないように小声で尋ねると


「断言はできないが多分、マジックショップナナミの商品としてではなく、プリーモ商会の商品として売るってことでしょう」


とショルトさんも小声で返事をしてくれた。

なるほど、珍しい商品を売ってるのはプリーモ商会ってことにしたいのか。ということは双眼鏡もプリーモ商会が売った事になってるのかも。難しいなぁ。私としてはどっちでもいいんだけどね。店をこれ以上広げる予定はないし、代わりに売ってくれるなら良い話の気もする。

でもそれならはっきり言えばいいのに。


「ここはわからないふりして売ったほうがいいですか?」


「そうだな。プリーモ商会はそんなに悪い噂がある所ではないし、勇者のタケル様がナナミさんの側にいることもっ知ってるから阿漕なことはしないと思う。もちろん嫌なら断っても大丈夫ですよ」


定価で買うって言ってるんだからボールは売ることにした。儲けはあるんだから割り切ろう。私に何も言わないで買っても問題ないのにわざわざ言うってことは誠実な方だと思う。

アルヴィンさんはたくさんの商品をカウンターに並べてボールも350玉注文してくれた。


「それは何ですか?」


私が注文数と値段をノートに書いてるとアルヴィンさんが興味深そうに聞いてきた。


「ノートとボールペンですよ。ここでも売ってるんですが全く売れてない商品です。識字率悪いみたいで字を書ける人あんまりいないから、ボールペンもノートも必要ないみたいです」


「確かにここでは売れないかもしれませんが、王都では売れますよ。ショルトさんもそう思いませんか?」


「商業ギルドでも少しずつ使ってますよ。急激に売れるものではなくても段々と売れていくものだと思います」


ショルトさんが答えてます。


「ボールペンとノートを100づつお願いします」


シャーペンと消しゴムもすすめると書いたものが消せることにとても驚いてた。


「シャーペンと消しゴムも200ほどお願いします」


アルヴィンさんはマジック鞄を持っているので、買ったものはどんどん鞄に入れていきます。


ショルトさんとアルヴィンさんが帰るとクリリが


「ナナミさん売って良かったの? 本当に定価で売るかどうかわからないよ」


「売った後は、お客さんがそれを捨てようが高値で売ろうが私には何も言えないよ。今まで売ったものだってどうなってるかわからないでしょ? だから気にしない事にしたわ」


「ナナミさんがいいならいいけど、ちょっと悔しいな。俺が大人だったらナナミさんの商品を広めるのをプリーモ商会なんかに取られなかったのに」


やっぱりクリリはかわいいなぁ~。



















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