第32話 勇者さまが来店2



私はとりあえず店を閉めることにした。他のお客さんがいると聞きにくいですからね。はい、閉めました。これでゆっくり話せます。


「もしかして勇者さまですか?」


思い切って聞いてみた。


「ああ。3代目だけどな」


おおー。やっぱり勇者さまだったよ。いるんですね~勇者って。


「あれ、でも魔王退治は?っていうか魔王っているの?えー」


まさか魔王がいるとか、全く思ってなかった私は軽くパニックを起こした。


「もう倒したから大丈夫だよ」


「そうか。よかった。魔王とかいたら絶対生き残れないよ。魔法しょぼいし。ん? でもなんでいるの?」


「え?」


「魔王倒したら日本に帰れるんじゃないの?」


私が尋ねると勇者さまは、ふーっとため息をついた。


「そうだよね。普通そう思うよね。俺だってそう思って頑張って魔王を倒したのに、実際は帰れなかったんだよ。あとで聞いてみれば、歴代の勇者さまも帰れた人はいないって.....」


そうなのか。勇者さまでも帰れないのか。っていうことは、私はなおさら帰れないよね。なんか泣きたくなってきたよ。もしかしたら勇者さまが帰れるんだったら自分だっていつかはって少しだけ、そう本当に少しだけ思ってたんだけど.....帰れないのか。


勇者さまの話を聞いてがっくしきている私に


「で、君は何者なの?」


と勇者さまは尋ねてくる。何者って言われても称号とかないしただの一般人だよね。


「倉田ナナミだよ。同じ日本人みたいだから言うけど女神様に連れてこられたの。この世界の人にはまだ異世界から来たってことは話してないわ」


「女神様に...そうか、たまに異世界人が連れてこられるって聞いた事がある。あ、俺は海堂建(カイドウタケル)。タケルって呼んでくれ」


そうか。私以外にも異世界から来てるんだ。じゃあ、話しても大丈夫だったのかな。警戒して隠してたけど。


「でもたいていは、国で保護するっていう名の下に監視されてるよ」


何?それ、怖いよ。やっぱり言わなくて正解ね。


「女神様からチート能力貰ってるから各国が欲しがるんだよ。そうなると誘拐とかされちゃうからね。君も保護された方が幸せかもしれないよ」


うーん。でも自由がないっていうのは嫌だな。それに私にはチート能力ないし、ないって分かったら何されるか...権力者って怖いよ。何してももみ消せる人たちだからね。


「大丈夫ですよ。今のところ誰にもばれてないですから。それに私にはチート能力ないって女神様が言ってました」


「これだけの商品出せるって十分チートだと思うよ。これって何なの?」


よくぞ聞いてくれました。ふふふん。心持ち胸をはって自慢した。


「私、百均で買い物できるんです」





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