第10話日本人にはお風呂だよ




お腹もいっぱいになったし、あとはお風呂。くまの寝床に帰った私は早速受付のサリアさんにお風呂について聞いてみた。


「お風呂はありますか?」


「お風呂?お風呂は貴族様の屋敷にしかないわよ。あとはよっぽどの風呂好きの人が作ってるっていう話は聞くけど、宿屋にはないわね。みんな魔法で綺麗にするから風呂に入らなくてもいいのよ」


サリアさんが言うには、昔は宿屋にも風呂があったけど生活魔法で綺麗にできるようになったからお風呂に入る人がいなくなったそうです。入る人がいないこともあってお風呂はなくなっていったそうです。


「ナナミさんは生活魔法使えますか? 使えないなら魔石屋さんで洗濯の魔法を買うといいですよ」


「洗濯の魔石で身体も綺麗になるんですか?」


「魔法はイメージですから、頭の中で自分が綺麗になることを思いながら使ったら綺麗になりますよ」



魔法はイメージが大事。サリアさんは当たり前のことのように教えてくれたが、魔法なんてないところからきた私に使えるだろうか?

部屋に帰った私は鞄をベットの上に置くと早速試してみることにした。イメージが大事。イメージだよ。


「綺麗になーれ!」


イメージと言われてもよくわからないので掛け声も一緒にかけてみた。なんか恥ずかしい。誰も見てないからできるけど。頭の中では私全体が綺麗になることを思い浮かべてみる。

なんか目を瞑っていても淡い光に包まれたのがわかる。その光がおさまる頃には、汗ばんでいた身体がスッキリと、頭の髪もサラサラになっていた。そしてきていた服も下着も綺麗になっていた。


「うーん。とても便利だけど、やっぱりお風呂に入らないと疲れがとれない気がする」


魔法が使えた喜びよりも、やっぱりお風呂に入りたい気持ちの方が上だった。

日本人には、やっぱりお風呂だよ。





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