第14話 猫の夢

 最近、Yさんはアパートに越してから変な夢を見る。

 その夢は自身が猫になっている夢だった。


 夢の内容は飼い主であろうと思われる女性と遊んでいたり一緒にご飯食べたりしているごくありふれた夢で時々見る夢だったからかYさんは変な夢としか考えていなかった。だが、ある日、飼い主の恋人だと思わしき男性が夢に現れてから一変した。


 男‐‐飼い主の恋人が忌々しげにYさん、猫を指差しながら女性に何かを言っている。よく耳を澄まして聞くと「捨てろ」と言っているようだった。どうやら、男は猫が嫌いらしい。

 飼い主である女性は当然怒り、貴方の様な人とは結婚したくない別れてと告げた。男はその言葉が酷くショックだったようで女性に別れたくないと言うが女性は左手の指輪を男に投げつけ男をさっさと追い出すとYさんを抱き上げ「嫌な思いをさせてごめんね」と優しく撫でる。その顔は泣くのを堪えているようだった。

 その後、新しいアパートへ引っ越し、引越し先でまた平凡な日常に戻ったが、暫くして女性が新しい恋人を連れてきた。新しい恋人は猫好きなようで来るたびに玩具で遊んだりブラッシングをしてくれた、女性の左手の薬指にはキラリと光る指輪があった。幸せそうな二人、これからもこの幸せが続いてくるのだと思っていた。だが、その夢を見た次の日の夜に夢を見た、だがその夢は最悪だった。


 その夢にはあの男、前のアパートで別れを告げられた男が出てきた。

 女性はいきなり現われた男を見て顔を青白くさせていた、男はそんなことも気にせずにやり直したい、愛してると告げるが女性は怯えながらもしっかりと結婚を控えた相手がいると伝えた。

 それを聞いた男は浮気女と叫ぶと隠し持っていたナイフで女性を斬りつけた、恐怖から女性は逃げようとするが男が向かった先がYさんの方だと知ると男を止めに入る。


‐‐みーちゃんに何をするつもり!?

‐‐殺すに決まってるだろ!! あれが居なきゃ俺はお前と結婚できたんだ!!

‐‐ふざけんじゃないわよ!! どうしてそんな風に考えるのよ!!


 女性は男からナイフを取り上げようとするが男女の力の差だろう振りきられてしまう。Yさんは逃げなければと思うのだが体が固まってしまって動けない。男がYさんにナイフを振りかざす瞬間、女性が男を突き飛ばした。


‐‐みーちゃん、逃げて!!


 その声と同時にYさんは動けるようになると男が通れない様な場所へと逃げた。

 そこで夢は終わった。


 最悪な夢だったなと思いながらYさんはテレビを点けるとニュースが映る。そのニュースで他県のアパートで女性が元交際相手の男に刺されて死亡、男は駆けつけた警察によって捕まったという事件が流れていた。ちらりと容疑者である男の映像が流れる、Yさんはその男が夢に出てきた男に似てるなと思った。

 それ以来、Yさんは猫の夢を見ない。

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