『彼女は巨人系』
プランニングにゃろ
(一話完結・1027文字)
ある日、世界各地で突然始まった巨大怪獣たちの襲撃。
日本でも怪獣対策本部が設置され、数々の怪獣迎撃案が協議されたが、唯一実現可能だった作戦は、防衛省と農林水産省が共同開発した人体巨大化プロジェクトだけだった。
早速、巨人化の志願者公募が行われたが、1ヶ月のプロレス訓練義務や巨大化した後は(衣服の巨大化が不可能な為)全裸で戦わないといけないという過酷な条件を見て、志願者なんかいないだろうと思っていたが、意外にも数人の志願者がいたようだ。
そして、適正審査の結果、初の巨人戦士に選ばれたのは、なんと20歳そこそこの女の子だった…。
さすがに女性を全裸で戦わせるわけにはいかないだろうという、女性権利擁護団体やPTAからの強い要請により、アパレル業界を総動員してかろうじて水着状の戦闘服が用意された。
身長150mの彼女は、その巨大さを除けばどこにでもいそうな普通の女の子だったが、人一倍強い正義感と元気で、傷だらけになりつつも華麗なプロレス技によって次々と怪獣を倒していった。
僕は、健気に戦うそんな彼女に、いつしか恋をしていた…。
ある日、怪獣を倒した後の彼女をこっそり追いかけてみた。(こっそりと言っても自転車で全力疾走だったが…)
そして、人気の無い山の狭間で、彼女が泣いているのを僕は見てしまった。
人類最強の巨人戦士となった彼女も、本当は普通の女の子なのだ。
頼る相手も無く孤独に戦う毎日がつらくないはずが無い。
僕はその時、決心した。
そして3ヶ月後の巨人化志願者、第2次募集。
僕は迷わず志願し、そして奇跡的に合格した。
きっとこれは僕と彼女の運命なのだ。
訓練が終わり巨人化した僕は、取る物も取り敢えず彼女のいる場所へ向かって、熱い想いを胸に全裸のまま大地を駆けて行く。
そして僕は、あの山の狭間で彼女を発見し、(左手で大事な部分を隠しつつ)右手を彼女に差し出しながら言った。
「キミはもう一人じゃない! これからはずっと僕と一緒に…。」
彼女は僕の言葉に頬を染め、うるうると潤んだ目で僕を見上げながら、僕の手を取ろうと手を伸ばす。
しかし、その時…
「ちょっと待ったぁーーー!」
声がした方向を振り返ると、なんと数十人の巨人系男子たちが、地平線の彼方から全裸でドカドカと走ってくるではないか。
なんということだ!
彼女の為に巨人化した男は僕だけじゃ無かったのだ…。
一方その頃、怪獣対策本部の作戦指令室では、モニターを見ていた広報宣伝部長のメガネがキランと光り、口元がニヤリとゆがんだ。
『彼女は巨人系』 プランニングにゃろ @planningNYARO
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