未定
さのす
第1話
あなたはこれまで生きてきて、何かひとつでも誇れることがあるだろうか。
部活に打ち込んだ、勉強を頑張った、愛する人ができた……、どんなことでもいい。それは身になったか?やってよかったと、そう思えるか?
僕は生まれて二十四年半経つが、過去に思いを馳せて、胸を張れる経験は何一つない。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学……人並みの人生は送ったが、感慨深い思い出はないのだ。その瞬間は楽しく思えたこともある。それでも、これからずっと大事にしていこうという出来事は、今のところない。
社会人二年目の春に仕事を辞め、ニートを始めて半年。夕方起床し、食べ物は日に一度、冷凍食品かチルド。体力が落ちているせいか、半日ほど睡眠をとる。典型的なダメ人間だ。きちんと理解している。
人間、数度の挫折ではダメになったりはしないが、小さい失敗でも積み重なると爆発する。弱いヤツだ、その結果精神を病んでしまった。僕は例によって堕落生活を送るようになった。
このままではいけないと、頭ではわかっている。実家からの仕送りも、いつ途絶えるかわからないのだし。
まずは外に出よう。月に一度の通院ではなくて、なにか、自発的に動かなければ。
でも。
プライドが邪魔をして、邪魔をしすぎて、僕はもう動けない。
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