カクヨムーーそこに本当に人がいるとでも?

藍川ユイ(藍川結以)

第1話 電子の海で漂流していた

「あー、カクヨムに載せた小説のPV、今日こそ増えたかなぁ」


先日オープンしたばかりのオンライン小説サイト、カクヨム。俺はそこに自作の小説を掲載していた。

正直、すごく面白い、とは言い難い。けれど、俺は密かに誰かに評価されるのを期待していたんだと思う。


しかし、やっぱり素人小説は素人小説でしかなくて、その上書き始めたばかりの俺の小説にはまだフォロワーも★もなく、レビューなんて夢のまた夢だった。そもそも、PVが少ない。せっかく勇気を出してネット連載を始めたというのに、TwitterもFacebookもろくにやっていない俺の小説のページを訪れてくれる稀有な読者など、ほとんどいなかったのだ。


「さて、今日のPVは……」


自室のベッドに寝転んで、片手でスマホをいじる。


「……えっ!?」


俺は自分の目を疑った。掲載から役二週間、3話書いて累計PVはたったの13だった。それなのに……。


「今日だけで、334……?」


★が123、レビューも84。昨日までどちらも0だったはずなのに。

俺は慌ててGoogleで検索をかけた。もしかしてどこかに取り上げられた?Twitterで誰かが勧めてくれた?

しかし、いくらキーワードを変えても、出てくるのは自分のページと、フォローもフォロワーもほとんどない自分のTwitterだけだった。


「どうなっているんだ……?」


不思議に思いつつも、浮わついた気持ちを押さえきれず、思わず口元がにやけてしまう。

ランキングを確認すると、一気に20位以内に上昇していた。

コンテストには文字数が足りなくて応募できなかったけれど、もしかすると、このままどこかの編集部に声をかけられるかも……。

そんな淡い期待を胸に、俺はレビューひとつひとつに目を通し、律儀に近況ノートに返事を書くのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る