夜明け静けさ
にごう
第1話
暗い路地中、私は追っ手から逃げている。
足音が近付いてきた。私は身を潜めた。
「いたか?」
「いや、いない」
追っ手の声が聞こえるたびに私の体は震える。
「どうしてこんなことに…」
・・・
私はいつも通り、学校の仕事を終え帰路に就いていた。
すると突然、怪しげな黒のスーツを着た連中に囲まれて、
「これからあなたにはゲームに参加していただきます」
そう言われると、腕に機械らしき物が取り付けられてしまった。
抵抗しようとしたが、力の差がありすぎてびくともしなかった。
「それではご健闘を」
そしてそのまま彼らは去っていった。
私は腕の機械を外そうとしたが、外れない。
しばらく頑張って外そうとしたが、どうやっても外れそうにないので諦めてそのまま家に帰ろうとしたが、その瞬間突然機械から音声が聞こえてきたのだ。
「これからあなたにはある人物たちから逃げてもらいます」
逃げる?どういうことだ?
「これから一晩我々の用意したヒットマンがあなたをターゲットとして狙います。夜明けまで逃げ切ればあなたの勝ちです」
ヒットマンって…殺し屋のことだよな?
「あなたが彼らに見つかり殺されたら負けです」
殺される!?なぜ私が殺されなければならない!?!?
私は混乱した。
「もし見事あなたが逃げ切ることができれば、賞金百億円をお渡しいたします」
ひゃ、ひゃくおく!?私は耳を疑った。しかし、負ければ死ぬのだ。参加などしたくない。
「終了の合図はこの機械がブザーを鳴らします。それでは始めましょう」
何!?もう始まるのか!
「ちょ、ちょっとまっ」
私がそう言いかけた時、
ビィー!!!!
辺りでブザーが鳴ったのが聞こえた。しかも一ヶ所じゃない。私を狙っている人物はそんなにたくさんいるのか!?
そして突然、バンッ!と大きな音が聞こえたと思うと私の真横を何かが通った気がした。
「いたぞ!あそこだ!」
見つかってしまったのだ。しかも彼らは何かを持っている。聞いたことはないが、さっきの音は銃声ではないのか?
するとまたバンッ!と音が鳴った。私は震えた。しかし、止まっていたら殺される。辺りを見回して路地を発見した。私はその中へ逃げ込んだ。
それにしても、さっきの声どこかで聞いたことがあるような気がした。
・・・
それから私はなんとか逃げ続けた。空を見ると明るくなってきた気がする。夜明けは近い。
「くそっ!どこ行った?」
足音が去っていく。彼らが私から遠ざかっていったのだ。
辺りは静けさが漂っていた。もうすぐこのゲームが終わる!
さらに空は明るくなってきた。残り数分に違いない!そして辺りに物音は聞こえない。
勝った…このゲーム私の勝ちだ!私は勝利を確信した。
「動くな!両手をあげろ!」
突然背後から声が聞こえ、何かを頭に突きつけられた。恐らく拳銃だろう。私は絶望の元震えながら両手をあげた。
とうとう見つかってしまった。あと少しなのに…ここは時間を稼ぐしかない!私はそう考えた。
「君たちは何者なんだい?教えてくれてもいいんじゃないかな?」
「時間を稼ごうとしても無駄だ。」
くそっ!無理か。しかしこの声、私はどこかで聞き覚えがある。どこだ?いったいどこなんだ?
「時間がないから終わらさせてもらうぞ」
そう言うと、背後の何者かがカチッっとハンマーを引いた音が聞こえた。
殺される!
「じゃあな」
「ま、まって…」
バンッ!
弾は頭を貫いた。即死はしなかったが死ぬのはわかった。
「チ…ク……シ…ョ……ウ」
―男はバタンと倒れた。そして、それとほぼ同時に「ビィー!!!!」という音が男の腕から鳴り出した。終了の合図だ。
男を殺した何者かがその機械を腕から外し、その音を止めた。そしてそれを男に向かって下手で投げた。
「あと数秒だったね。あと数秒逃げ切れれば勝ちだったのに。残念」
彼女はニヤッと笑った。そして、
「でも、勝たせてくれてありがとね。センセー」
そう言って彼女はその場を去っていった。そして日の出とともに額から流れる男の血が赤く光った。
ー終わりー
夜明け静けさ にごう @nigo
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